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理学療法ガイドライン ②

前回、ガイドラインの活用法について考えてみました。今回は実際の中身について検討してみたいと思います。

・第1版との違いについて

今回、第2版を見てみてまず思ったこと。「推奨グレードが軒並み下がってる…」。そうなんです。CQ(クリニカルクエスチョン)一覧を見てみても「弱い推奨」や、エビデンスレベルが「弱い」や「非常に弱い」がずらっと並んでいます。第1版とは表記の仕方が若干異なるのですが、第1版では推奨グレードA(勧められる強い科学的根拠がある)と表記されていた事項の評価がさがっているんです。

例えば、「脳卒中 早期理学療法」について

第1版では「発症後72時間~2週間以内に理学療法を開始した方が良い」という項目にグレードA(勧められる強い科学的根拠がある)、エビデンスレベルは2(一つ以上のRCTによる)がついていました。しかし第2版では「発症後48時間以内の理学療法は有効か」という項目に「条件的推奨」、エビデンスレベルは「非常に弱い」という判断がされています。

これって、理学療法のエビデンスが弱くなったの?と感じやすいのですが、見比べてみると一概にそうとは言えないんじゃないかな?というのが私の意見です。

・エビデンスレベルについて

エビデンスレベルの表記なんですが、第1版では「2」となっています。これ、何を現しているかと言うと、「一つ以上のRCTによる」※RCT:ランダム化比較試験 とあるんですね。ちなみに「1」は「システマティックレビューやRCTのメタアナリシス」です。そうなんです。第1版ではシステマティックレビューやメタアナリシスに基づいた判断、というわけではなさそうなんですね。※メタアナリシスやシステマティックレビューの詳細な意味については各自で調べてみてください。簡単に言うといろんな論文まとめてみましたよって解釈でいいとは思いますが…。私自身あまり詳しくないもので…笑

第2版を見てみると、基準となるアウトカムが明記されています。内容を簡単にまとめると、「やった方が良さそうだけど、絶対そうだとは言いきれないかも。でも、やったことで有害事象につながる可能性は低そう。なので推奨します」といったニュアンスでしょうか?

そう考えてみると、第1版の方ではシステマティックレビューやメタアナリシスもない状況でしたので、グレードA(強く推奨)とするには根拠が足りなかったのかな?と思います。なんとなく作成者側の希望的観測も入っているのかなーとも感じます。

・まとめ

第1版と比較するとCQごとに項目化され、簡単に解説も入れてくれているので、読み物としても成立していると思います。特に若手の方たちには読むだけで勉強になると思います。今回は脳卒中の早期理学療法を例に見比べてみましたが、他の項目も推奨の強さで言えば同程度のものが多いです。「これじゃあ意思決定に使えないじゃん」という意見も聞こえてきそうですが、各CQ項目の特徴を踏まえた上でなら、選択肢の提示としては中立的だと思いますし、近年批判的意見の多い徒手的な促通療法についても、選択肢の一つとして挙げやすくなったんじゃないかなと思います(第1版では推奨グレードすらついてなかったので)。

この「中立的な見方がされている」という点が意思決定のために用いるものとしては非常に有効かなと思います(もちろん医療者側が作成したものですが…)。「〇〇さんにおまかせします」とセラピストに全てを委ねてくださる患者さんも多いですが、それはやはり知識がないからだと思います。リハビリテーションは受け手が能動的に取り組めることが一番重要だと思うので、患者さんが「理解して、選択する」といったプロセスを踏めると非常に効率的にトレーニングを進めることができると思います。そのためのツールとして理学療法ガイドラインを初めとした各ガイドラインを使えるといいのかなと思います。

各項目について詳細深堀りしたいところですが、なにで量が膨大なので、今後の課題として少しずつ更新していこうかなと思います。

・参考文献

公益社団法人 日本理学療法士協会 監修:理学療法ガイドライン 第2版. 医学書院, 2021 

公益社団法人 日本理学療法士協会:理学療法診療ガイドライン 第1版   http://jspt.japanpt.or.jp/guideline/1st/

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