ぬい

4月に読んだ本。簡単なまとめ。

1、ジヴェルニーの食卓 原田マハ

画家が制作した作品の裏には、多くの物語がある。そして、ひとつの作品が完成するまでには家族、友人、パトロン...たくさんの人の支えや理解が必要なのだということを実感。ゴッホが肖像画を描いたことで有名なタンギー爺さんの話があるのだけど、彼の店にはのちに名声を得る無名の画家たちが集まってきて、お金のない画家たちのために彼らが描いた絵と売り物の絵の具を交換する。それで店は火の車なんだけど、支えるってほんとうに見返りを求めない行為だなと。

2、本を読む人のための書体入門 正木香子

書体というニッチな分野にのめりこみ、掘り下げるその熱意。なんとなく見ている書体にも歴史があり、その書体が使われているのには理由がある。使い分けることによって個性や変化を生みだし、読み手に与える印象を変えてしまう。ぼくは、この本を読んで初めて気付いたというか、意識してなかったんだなと思ったのが、書体をつくった人がいるということ。そんなあたり前の事実に遅ればせながら気付けてよかった。

3、浮遊霊ブラジル 津村記久子

もれなくすべて面白かった。幻想的な話が何篇かあるのだけど、たまらなく好みだった。ぼくは幻想的な話が基本大好きで、読みながら川上弘美さんの『神様』という小説を思い出した。日常の細かい描写やありふれた景色も津村さんの手にかかれば、とてもドラマチックに見える不思議。ほかの作品も読んでみよう。

4、ジーノの家 内田洋子

エッセイなのに小説のよう。彼女の目を通して語られるイタリアは、一味違って、登場する人物がもれなく魅力的で、「事実は小説より奇なり」を地でいっている。イタリアの明るい部分だけではなくて、陰の部分も描かれているのがよい(ミラノの街にも不法地帯がある)。型にはめられていないイタリアの人々の日常が垣間見れる。

5、愛されすぎたぬいぐるみたち マーク・ニクソン

大事にされたぬいぐるみの写真と持ち主のエピソードが語られるのだけど、なによりぬいぐるみの写真がキュート。どこか欠けるたびに、修復され大事にされている様子がうかがえて、ほっこりする。一緒に旅したり、キスしたり、秘密の話をしたり、エピソードも面白い。ぼくは、そこまでぬいぐるみに思い入れはないのだけど、もしかしたら忘れているだけかもしれない。大人になってもぬいぐるみを大事にしている人が多いのが印象的だった。

6、しろいろの街の、その骨の体温の 村田沙耶香

かなり衝撃的。学校という狭い空間での息苦しさがこれでもかって描かれている。勝手に膨らむ自意識や突然できるクラスの中のランク分け、教室の中にしか存在しない価値観。教室のルールからはみ出すと、敏感にクラスは匂いを感じとって、のけ者にする。ページをめくりながら、心がヒリヒリするというか、どんよりとしてしまったのだけど、グイグイと読んでしまった。あのころの自意識が暴かれる感じ。そして、タイトルがグッド。

7、マーヤの自分改造計画 マーヤ・ヴァン・ウァーグネン

60年前と悩みって大して変わらない。1951年の自己啓発本を手に取ってこんなの時代遅れと笑うのは簡単なだけど、それを信じて実行に移すマーヤの心意気はあっぱれ。ファッションとかメイクもその当時をちゃんと再現する徹底ぶり。図らずもスクールカーストの話を連続で読んでしまったのだけど、こちらはどちらかというと笑える箇所もあり、前向きな印象。彼女が最終的に見つけた「人気者」の定義に感動。


#書評 #読書 #本 #日記

Twitter:@hijikatakata21

最後まで、読んでくださってありがとうございます!