9月に読んだ本、簡単なまとめ

1、夢の叶え方を知っていますか? 森博嗣

「夢」というのは、ひどく曖昧で漠然としている。「夢」を詳しく分解し、そのうえでどう行動をとればいいかを提案するのが本書である。印象的だったのが、その夢は時間的に長いスパンをもっているかという箇所。今の時代、「作家になりたい」という夢を叶えることは簡単(自分でものを書いて、名乗ればいい。自費出版もあるし、個人で電子書籍をだすなど)だが、「作家であり続ける」ことは難しい。その夢を叶えたあと、どう存続させ、どう成長させていくかかが、より大事。ちなみに、森博嗣さんの夢は庭に鉄道模型(人が乗れる)を走らせること。バイト感覚で小説家になったというのだから、すごい。

2、雪の練習生 多和田葉子

ホッキョクグマが自伝を書くとはなんぞやと思うかもしれないけど、この作品の中では「そのおかしな行為」が不思議と不自然に感じない。人間とホッキョクグマをへだてる種別の境が溶け合うよう。冷静な目で世界を感じ、世界を知っていくその過程が新鮮で、とても面白い。自伝を書くことは、過去を振り返るのみではなく、自分自身を深く知ろうとする営みなのかもしれない、そんなことをこの小説を読んで思った。

3、断片的なものの社会学 岸政彦

なんだか人生っていろいろだなと改めて思う。すこし目線をずらせば自分が知らない世界は、たくさん存在していて、他人が見ている世界を自分が知らないように、自分が見ている世界を他人は知らない。この本には、明確な答えはなくて、心の奥で眠っていたなにかをそーっと揺り動かされる感覚に陥る。必要なものは採用され、必要ないものは除外される。それは正しいようで、正しくないのかもしれない。無意味で、断片的なもののほうにこそ、飾り気のない真実があるのかもしれない。

4、残り者 朝井まかて

信じていたものが突然なくなるというのは、どんな気分なのだろう。よもや260年近く続いた幕府が瓦解するなんて、現実でありながら、到底信じることはできなかっただろう。大奥に務めていた千人近い女性は、そのほとんどが一夜にして職を失った。ずっと変わらないというのは、ありえない。けどその突きつけられた現実も受け入れがたい。新しい時代という生き物は、必要なくなったものを否応なしに食い尽くす。幕末~明治は、いろいろなものが180度変わる節目の時代で、その変化の波に対応できず飲み込まれるものもいれば、変化にうまく適応していく人がいる。残酷だが、そういう危機的な状況で人はどんな選択をしていくのか、その様を見るのはとても興味深い。



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