10月に読んだ本、簡単なまとめ

1、夜市 恒川光太郎

パラレルワールド的なストーリーには、ものすごい惹かれる。自分の知らない世界が、実はすぐ近くに存在している。なにかのきっかけで、そっちの世界に足を踏み入れる可能性がある・・・。というのは、とてもワクワクしてしまう。でも、客観的に見ているから面白いのであって、実際に自分の身に起こったら相当パニックになるだろう。だけども、いま生きている世界と別の世界が並行して存在しているのは、心をかきたてさせるなにかがある。

2、パパの電話を待ちながら ジャンニ・ロダーリ

本の帯にも書いてあったが、イタリア版グリム童話といったところか。この本を読んでいて、実際にはありえないことが起こる、それが物語の醍醐味だとあらためて強く思った。ありえないことを考えるというのは、常識に縛られず、想像力が豊かでないとできない。それを物語に落とし込み、非常に愉快で、楽しい話をつくる作者の力量。短い話の中にも、物語の本質が感じられるし、「話をつくることは、もっと自由だ」と励まされるような感覚を覚えた。

3、家康、江戸を建てる 門井慶喜

家康の天下が近づくと、戦国の世は終わりを告げ、新たな段階に入る。敵を蹴散らす、勇ましい武力ではなく、平和の世を永続させるための仕組みづくりを担う、技術や知識が必要になる。湿地帯からの脱却のため利根川の流れを変えたり、全国に流通する金貨を延べたり、飲み水を江戸の街に引っ張ったり。歴史の表舞台には出て来ないが、命がけで城づくり、街づくりに汗を流した無名の人々がいる。歴史というと、どうしても英雄たちにスポットが当たるが、彼らはその偉業を何から何まで一人で行ったのではない。無名だが、素晴らしい人々の助けがあってこそ。歴史というのは、そういう人々を含めた大きな流れなのである。

4 ファミリーレス 奥田亜希子

とてもリアルな話。家族の形はさまざま。わかりやすいハッピーエンドではないけど、どの短編も最後はかすかな希望で終わるのがよかった。「指と筆が結ぶもの」という短編のなかで、「それにね、昔、おばあちゃんに言われたことがあるんだ。家族になるなら、自分の長所を気に入ってくれる人じゃなくて、短所を許してくれる人を選びなさいって」というセリフがある。夫婦の間で「なぜ結婚したのか」という話題になったとき、妻の方が結婚した理由のひとつとしてこの言葉を相手に言う。けど、夫は妻が短所だと思うことを短所だと思っていなくて、むしろそこに惹かれている。このシーンはとても印象的だった。

5 生きるように働く ナカムラケンタ

好きなところで、好きなことをして働ければいいなと思う。ぼくにとって、それは理想だけど、いまはとても遠いところにある。けど、この本のなかに登場する人たちは、「好きなところで、好きなことをして働く」を実現している。そして、自分を持っていて、とても自然で、確かな時間を生きているように思える。その姿は、働くために生きるのではなくて、生きるために働くのでもなくて、生きることと働くことが自然と一体になっている。「人」が中心にあるのだ。「夢物語」かもしれない理想も、いつかは「自分の物語」になるかもしれないと、そんな勇気をもらう。



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