8月に読んだ本、簡単なまとめ

1、バースデイ・ガール 村上春樹

唐突に「願い事を叶えてあげる」と言われたら、なんと答えるだろう。ぱっと思いついたのは、本を無限に買えるカードとか(子どもっぽくてすいません)けど、ひとつとなるとなかなか決められない。人間の欲は無限だ。たとえひとつの願い事が叶えられたとしても、「ああ、やっぱりあれを叶えてもらえばよかった」とたぶん後悔してしまう。この本のあとがきのなかで、村上春樹は20歳の誕生日を覚えていると書いているが、ぼくは20歳の誕生日に自分がどうしていたかをまったく覚えてない。たぶん、ケーキぐらいは食べたはず。

2、阿蘭陀西鶴 朝井まかて

井原西鶴がまず俳諧師として世に出たことを初めて知った。井原西鶴というと「好色一代男」のイメージが強く(といっても、日本史の教科書レベルの知識)、てっきり最初から作家だと思っていたが、どうやら違うらしい。この物語は、心が離れていた父と娘の和解がひとつのテーマだと思うけど、その心のつながりを塞いでいるのは、誤解や互いの不器用さだ。つまり、相手を知ろうとする努力だったり、伝え方を見直せば解決することもありうる。西鶴の娘おあいは、父のことを憎んでいるのだけど、憎んでいると相手の悪い面がおのずとクローズアップされてしまう。フラットな気持ちで、互いの気持ちを知ろうとする姿勢が、心を通わすことにつながる。

3、リップヴァンウィンクルの花嫁 岩井俊二

すごく現代的で、はかない美しさを感じる小説だった。最後のページまで読んだあと、人と人とのつながりとは、いったいなんだろうかと考え込んでしまった。余談だけど、SNSでつながった人と実際に会うことって、いまや普通なのだろうか。ぼくは、その経験がなくて。会ってみたいような、実際に会うのは怖いような、気持ち的には半々である。物事の明るい面をまず見る人と暗い面をまず見てしまう人がいる。ぼくはどちらかというと後者だ。けど、SNS経由で、実際に会ってみたら、この物語の主人公のように人生の軌道を変えてしまうような出会いがあるのだろうか。

4、十頁だけ読んでごらんなさい。十頁たって飽きたらこの本を捨てて下さって宜しい。 遠藤周作

タイトルがかっこいい。挑戦的かつインパクト大。この本を読んだら、著者が述べる「手紙を書くコツ」を実践してみようと思うこと、請け合いである。手紙に限らず、コミュニケーション全般に適用できると思われます。下に感想書きました。

5、絶望図書館 頭木弘樹 編

絶望に陥ったときに支えてくれるのは本だ、という著者の気持ちは痛いほどわかる。本は、明確な答えとかありきたりな励ましはしない。ただ寄り添って、立ち直るのを待ってくれる。作風がダークだろうが、ポップだろうが関係なく、読んでいるだけで落ち着く本ってある。ぼくにとっても、そういう本や物語は何個かある。金子みすゞの『わたしと小鳥とすずと』とか稲垣足穂『一千一秒物語』とか芥川龍之介の「トロッコ」・「蜜柑」、ムーミンシリーズなどなど。ほかにもたくさん。とにかく本は良いです。



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