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伊勢神宮と鳥羽水族館を巡る旅の記録
前回、4連休の初日に奈良へ行った時のことを書いた。今回は更に時間を遡り、3連休の話を書いてみたい。
3連休は両親・妹と共に伊勢志摩へ旅行に出掛けていた。3連休より4連休の方がのんびり旅行できそうだが、妹が4連休に別の予定を入れていたので、家族で動くのは3連休の方になった。
旅行中に訪れた先は2つあった。伊勢神宮と鳥羽水族館である。
先に行ったのは伊勢神宮だった。3連休のうち晴れているのが1日だけであり、そこに合わせて行動しなければならなかったからだ。
ひじき家は、僕が小さい頃から少なくとも1年に1回は伊勢志摩に出掛けており、伊勢神宮にはほぼその度に行っている。森に包まれた参道を、母がとても気に入っているからだ。そういうわけなので、伊勢神宮に行っても今更目新しいものは特にない。
だが、今回の伊勢神宮は非常に印象に残った。新緑がとても綺麗だったからだ。新緑の伊勢神宮だって初めてではない。だが、僕は今回、「この森はこんなに綺麗だったのか!」と感動せずにはいられなかった。
参道を歩いてお参りするというのは、当たり前のことだが疲れる行為である。前の晩に夜中までお酒を飲んでいたこともあり、体力の消耗は著しかった。しかし、それを補って余りあるものに出会えた気がした。
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「今日の伊勢神宮は過去最高やわ」
僕がそんなことを言うと、
「素直に感動して過去最高をすぐに更新できるのは、お兄ちゃんのいいとこだよね」
と妹に返された。理知的で審美眼のある妹は、決して心の冷え切った人ではないが、そう簡単には最高潮に達しないのかもしれない。
参拝を済ませた後は、お店の立ち並ぶ通りに入って、お土産やその日の晩につまむお菓子などを買って回った。こちらの方は写真が殆ど残っていないが、通りに面した酒屋の前で、酒樽に乗って気持ちよさそうに寝ていた猫だけはバッチリ撮った。
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◇ ◇ ◇
鳥羽水族館に行くのは、伊勢志摩に着いてから決まったことだった。
既に述べた通り、3連休は天気があまり良くなかったので、最初のうちは行き先の見当もつかない状態だった。そんな中、僕が「実は前からずっと鳥羽水族館に行きたいと思ってたんやけど」と言ったことがきっかけで、話が動き出した。そこへ、いとこが最近伊勢志摩を旅行し、鳥羽水族館にも行ったという情報がもたらされた。
「ラッコのショーが良かったって言ってたよ」
母がそう言った時、思いがけないところからリアクションがあった。
「ラッコ見たい!」
妹だった。僕は全く知らなかったのだが、鳥羽水族館で飼われているラッコの動画が、SNSで流行っていたらしい。妹はそれを見て、日々癒されていたのだ。
そういうわけで、連休最終日、僕らは鳥羽水族館へ向かった。
鳥羽水族館は、小さい頃にジュゴンを見せてもらいに行ったことがあるだけだった。外観は何度か見ているが、中に入るのは何年振りかわからない。メインがラッコになっていることさえ知らなかった。
入って最初に驚いたのは、館内が自由通路で繋がれていて、気になる水槽だけを好きな順番で見て回れるようになっていたことだ。僕の知っている水族館はどれも、順路に従って決まった順番で魚たちを見ていくものだったから、それだけで常識を揺さぶられた。
着いて間もなく「ラッコのお食事タイム」というショーが始まるというので、妹に引っ張られる形で、僕らはラッコのいるエリアに向かった。水槽の前には既に何重もの人だかりができていて、割って入ってラッコを見るのは至難の業だったが、幸い通路の1つが通り抜け専用になっており、何周も回ればラッコたちを見られるようになっていた。
食べ物を貰いながら芸をしたり、飼育員さんとじゃれ合ったりするラッコたちは、遠目にもかわいかった。妹は「かわいいー!!」と感情を爆発させていた。ラッコの前では理知など吹き飛ぶらしい。
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ショーが終わった後、僕らはぐるぐる館内を見て行った。逐一書き出すとキリがないので、印象に残ったところだけ挙げていこう。
▶ジュゴン——先ほども書いた通り、僕の中では鳥羽水族館と言えばジュゴンである。数十年ぶりに見たジュゴンは、おっとりしていて可愛らしく、顔立ちや仕草も見ていてほのぼのとするものだった。
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▶カワウソ——想定外に可愛かった生き物で真っ先に思い浮かぶのはカワウソだ。3つくらいのケージに分かれて飼われていたのだが、あるケージの子たちは元気に駆け回ったり泳いだりして、愛嬌を振りまいていた。一方あるケージの子たちは、暖かいプレートの上で仰向けになって寝ていた。「オッサンみたい」という声もあったが、警戒心を解いて休んでいる姿もまた微笑ましかった。
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▶ペンギン——ペンギンも思いがけず可愛かった生き物である。なんと、高さの低いアクリル板の近くまでやって来て、羽をパチャパチャさせながら立ち泳ぎ(?)を披露してくれたのだ。距離が近かったこともあり、めちゃくちゃテンションが上がった。
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▶へんな生き物研究所——一時期話題になったダイオウグソクムシなどが展示されているエリアである。ここは生き物たちの紹介文が特徴的だった。生息域や生態などが淡々と書かれているのではなく、それぞれの生き物たちに二つ名のようなキャッチコピーが付けられているうえ、説明もユーモアに富んでいる。水族館の人たちの工夫や生き物たちへの思い入れを感じるエリアだった。
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・アフリカマナティー——「そんなのいたんだ!」と一番驚いた生き物である。正直、僕はマナティーがどんな生き物なのか、今もよくわからない(それを言えば、ジュゴンもかなり謎めいている)。1つだけわかったのは、淡水域に生息する巨大哺乳類ということだ。そんなものがこの世に存在すること自体ビックリである。
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そうして館内をやっと半分ほど見て回ったところで、妹が言った。
「私もっぺんラッコ行く」
ラッコのショーがもう一度あるので、早いうちに陣取って近くで見たいという。「私はラッコのために来たから」と続ける妹は、完全に問答無用モードである。
僕も最低限見たいものは見られたので、あとはラッコでいいような気がした。もっとも、ずっとラッコの前に張り付く気はなかったので、父と連れだって別のものを見に行ってから、通過用通路を何度も回るに留めた。
結局滞在時間の3割以上は、ラッコのための時間になった。
ラッコが可愛いことは既に触れたので、ここで長々と繰り返すのはやめておこう。
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——やめられなかった。
◇ ◇ ◇
以上が3連休の記録である。短い時間に色んなことをやったので、ヘビーな休暇ではあった。とはいえ、新緑の清々しさを堪能することも、ずっと行きたかった場所に行くこともできたのだから、満点以上の休暇だった。
前回の奈良といい、今回の伊勢志摩といい、日常の物語というよりは非日常の記録という感じがするが、結局僕はそういうものも書きたくなってしまうのだと思う。
(第221回 2024.05.07)
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