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時が成約にシナプスだけ満ちて【現代詩】

善と無関心よ、聞こえているか?

俺は今宵悪夢を発明しようと思う。透けるような魅力を持つこの街で。
今宵俺はすべてのネックレスの囁きから新しい白鳩が舞立つのを見るだろう。
鳥たちはできる限りの悪を撒き散らそうと懸命に羽を動かし、
匿名の真なる化学反応としての空を作り上げるだろう。

善と無関心よ、聞こえているか?

真正面に達せられたバグよりも、善意で行われる悪魔の囁きが、
いずれどれだけ真っ向に銀時計の針を腐食させてしまうのかを。

親愛なる隣人脳波よ、聞こえているか?

時が成約にシナプスだけ満ちて、
いずれ無関心を装わされていた街の利用者も危険と失望とに誘い寄せられる。
その瞬間の訪れるときにはお前たちも俺たちも愕然とするだろう。
しかし現実には一部が喜び一部がおののくだけ、
けれども誰もが悪を感じ始める。
それが本当に悪として人とシステムのまごころに吸収され尽くして、
宴のあとに限って、
やっと樹木の限りに満ちた種子のようにも一粒の雨のようにも、
善は降り注いでくれるだろう。

そうだ、世界は災いに満ちていて、
俺達はそれを殺戮する兵士として生まれてきたわけじゃない。
俺たちにはいつだって善に満ちた希望があったはずだ。
俺たちはいつだって誰かの微笑みを垣間見たことだってある。

俺たちにはいつだって悪にも善にもとらわれない、
すり抜ける羽虫のような無言語の感情がつきまとう。
けれども、でも、それでも突き詰めた先には、
謙譲も尊敬も無い内部での街に俺たちはいた。

もちろんそんな言語の活用うんぬんを大人としてもう逸脱することはできない。
謙譲は謙譲。尊敬は尊敬。
けれども、でも俺は今あるがままの悪夢にいる。
悪に満ちたビジネスマナーよりも、
善に満ちた約束の地へと向かう決行の日を、
祈りつつも苛立ちつつも、憧れの人のように見つめていたほうが、
なんというか、こう、生きている気がする。


ふと見上げると、隣人の天使にも、
羽虫みたいな羽があるじゃないか。




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