見出し画像

書評、SE職場の真実【DXに関わる全ての人に捧げる】

一冊の書籍を紹介します。

デジタル化だったりDXだったりが喧伝される中、今後もIT業界は「食いっぱぐれない」業界として有力なのだとおもいます。ですが、その業界構造は複雑怪奇です。渋谷ベンチャー的なスマートな印象とは裏腹に魑魅魍魎が渦巻く世界でもあります。

あなたのこれからのキャリアとして、ないしは、たとえばお子さんの未来を考える上で、IT業界の実態を知っておくことはムダにはならないと思います。この書籍は現場を生き抜いた者の生の声として、非常に解像度高くIT業界の実態を教えてくれます。

① 読み返すたびに新たな洞察が得られる

僕は15年以上に渡ってDXの推進に携わってきました。その長い現場経験のなかでは苦難だったり絶望感だったり徒労感だったりを数え切れないほど感じてきました。

そういうとき、僕には書籍に答えを求めるクセがあります。一般的な入門書もそうですし、特定技術の高度専門書、要求開発・要件工学技術、プロジェクトマネジメント、そして技術と社会の相互作用に言及するオピニオン書籍などをたくさん読んできました。

いまのやり方よりも良いやり方があるのではないか、僕が知らないだけでこの問題は既に解決されているのではないか、これからの仕事を考える上で必要なスキルはなんだろうか、近未来の社会動向やそれに紐づく技術トレンドはなんだろうか。数々の素晴らしい書籍たちがこれらの問いに答えてくれました。WEB記事ももちろん良いのですが、やはり出版というフィルターによって選抜された文章は品質が高く、人類の知の結晶なのだと思います。

しかしながら技術書の多くは時代とともに陳腐化します。技術の世界は日進月歩で、たとえばいまからStrutsの本が出版されることはないでしょう。そんな移り変わりの激しい業界を語ったなかでも、本書はいまでもよく読み返し、そのたびに新しい洞察を得ることができます

② 本書はIT業界の様々な役割を経験した小説

著者は赤俊哉氏。派遣SE・プログラマーからユーザー企業に転職。IT部門、業務部門を経て、現在はIT戦略の策定を担当されている方です。IT業界の有名な教授とかではなく、まさに現場で生きてきた方。そんな方が語るこの書籍は、様々な立場・役割を経験したからこそ分かる生々しいDXの本質を教えてくれます

この書籍を何度も読み返してしまう魅力は、IT業界の様々な役割を転々した実体験を小説にしているところで、この著者にしか書けない文章であるということだと思います。

前半の派遣SE・プログラマーの箇所は延々と暗い話が続くのでちょっとしんどいですが、後半のユーザー企業に移ってからの苦悩、葛藤、理不尽さ、そして物事を成し遂げたときの達成感にすべて共感します。そしてそれら経験から導かれるDXへの示唆は僕も全くの同感です。

僕も長くIT業界にいますが、基本的にはユーザー企業に所属していますので、派遣SE・プログラマーの実態は分かりません。彼らがどんな想いで仕事をしているのか、何を生きがいとして生きているのか、僕たちユーザー企業の言葉をどういうふうに受け取っているのか。それらは想像の域をでません。そしてそれは逆もまた然りだと思います。

イソップ寓話に「3人のレンガ職人」という話があります。ざっくりいえば3人のレンガ職人に何をしているのかを尋ねたところ、

男1「レンガを積んでいる。なんでこんなことしなければいけないのか。」
男2「大きな壁を作っている。仕事ができるから家族を養っていける。」
男3「歴史に残る大聖堂を作っている!ここで多くの人が祝福を受け悲しみを払うんだ!素晴らしいだろう!」

で、モチベーション高く仕事をしているのは誰か?といった話です。想いが違えば仕事への価値観が変わり、ひいては人生の幸福感もかわってくるのでしょう。なんだかブラック企業のやりがい搾取的な感じもしますが(笑)

③ IT業界ではどの企業に勤めるのかが最も大事

IT業界には複数の役割が存在します。ITを利用する役割、ITを企画する役割、ITを設計する役割、ITを開発する役割、はたまた自身ですべてを行う役割。一般的にはそれぞれの役割に応じた企業があります。

* ITを利用する役割 : エンドユーザ、IT発注元の業務部門
* ITを企画する役割 : IT発注元(ユーザー企業)の情報システム部門
* ITを設計する役割 : システムインテグレータ(SIer)
* ITを開発する役割 : 派遣SE・プログラマー
* 自身ですべてを行う役割 : ベンチャー企業

デジタル化やDXがこれからも伸びると踏み、これからIT業界を目指す方にとって企業選択は非常に大切です。人生を左右します。ほんとです。

まとめ

イソップ寓話の通り、レンガを積むのか、家計のためなのか、大聖堂をつくるのか。それらはすべて役割の選択次第です。そして困ったことに、IT業界ではこれら役割が違う人たちがコラボレーションして仕事をしています。誰一人欠かすことができません。

IT業界で仕事をする上で、複数の役割を意識することは避けられません。そしてそれを理解する上では教科書ではなく、生々しい実体験にまさるものはないと思います。

僕自身もIT部門や事業部門など様々な部署を経験しましたが、その都度読み返しをしていまして、いまでも新しい発見がある書籍です。

実体験に価値があるなら、僕の経験談でも綴ってみようかな。

おわり。

/*———————————————————————————————
他の記事はこちらから。スキやフォローをいただくと喜びます。
サイトマップ  ≫ プロフィール
———————————————————————————————*/


いただいたサポートは有効なDX情報を提供する活動に使わせて頂きます。