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「一回休み」はゲームの中だけ?
小学生の頃、人生ゲームが流行った。当時まだ人生ゲームを持ってなかった私は、遊びに行った友達の家に人生ゲームがあるとすごくテンションが上がった。カラフルなルーレットを回す時の、ビューンという爽快な音がたまらない。「給料日」とか「マンションを買う」とか、大人なイベントもカッコよくて憧れた。
楽しい人生ゲームで一番つまらないのは、「一回休み」のマスに当たることだ。コマを進められないとか、負けて悔しいとかは、別に気にならない。それよりも、友達がわいわいと面白い人生イベントに盛り上がっている間、自分には絶対に何も起こらないのがつまらなかった。ルーレットを回す順番が来れば、誰しもスポットライトが当たって主人公になれるのに、その権利を剥奪された気分になる。だから、「借金する」のマスには止まってもいいけど、「一回休み」にだけは絶対に止まりたくなかった。
大人になってから、漠然と「お休みしたいなあ」と感じる瞬間がある。仕事とか、人間関係とか、具体的にはわからないんだけど、「お休みしたいなあ」と頭の中で呟くことがある。毎日何となく過ごしていても、大小それなりにイベントは起こる。良いこともあれば、もちろん悪いこともある。悩んだり、なかなか前に進めないことだって。そんな日々をお休みして、少しだけ離れたくなるのだ。
ふと、あの頃遊んだ人生ゲームを思い出していた。あんなに嫌だった「一回休み」のマスが、今は何だか羨ましく感じる。皆がルーレットを回し、賑やかに過ぎていく出来事を、ただ静かに眺めている時間。別によそ見をしていても、他ごとをしていても、自分には何の問題もない。そんな時間。
リアルな人生で「一回休み」に止まれることってあるんだろうか。偶然止まれるものじゃないから、なかなか難しそう。ルーレットを回さず、何のスポットライトにも当たらず、のらくら気ままに過ごしても大丈夫な時間。そんな「一回休み」が、リアルな人生にだって一回くらいあってもいいのかもなあ。
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