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MMAでの組み技ってなんだ?【MMAミリしらキット】

*この記事は執筆者の個人的な考えや推測が多く含んでおり、また格闘技関係者から直接話を聞いて執筆したというものではなくただの一格闘技オタクが書いたものであるため間違った情報が書かれている可能性があります。もし間違いやご指摘、誤字脱字があった場合はコメントなどで教えていただけると嬉しいです。
 またこの記事内で選手や格闘技関係者の敬称を省略している場合があります。予めご了承ください。


➀はじめに

現在日本ではRIZINや朝倉兄弟などの頑張りで2000年前半以来のMMA(総合格闘技)ブームです。
ですがそんなMMAで興味を持った人の心を一番折るものといったら個人的には”組み技の攻防”だと思います。正直知識が無い状態だとどっちが有利かどうかやそもそも何をやっているかすらわからないかと思います。

相手のタックルに対応するMMAで代表的な組みの攻防

そのためこの記事ではレスリング・柔道・ムエタイといったMMAでその技術が使われている代表的な組み技競技の紹介や実際にどのようにMMAにその技術を流用しているか、それを駆使している選手の紹介などを書いていければと思います!
皆さんの格闘技ライフに何かプラスになれば幸いです!



②レスリング

おそらく現代MMAで最も必要とされる技能であるレスリングですが、その歴史はめちゃくちゃ古く紀元前3000年ごろのメソポタミア文明の時代にはすでに競技として確立していてギリシアで開催していた古代のオリンピックでも行われていました。ちなみに昔のレスリングは裸にオリーブオイルを塗りたくって行っていたそうです。
その後古代ローマの時代にギリシアでのレスリングにローマ土着の格闘技が組み合わさってできたのが”グレコローマンスタイル”で、ヨーロッパからイギリスにギリシアのレスリングのまま渡りイギリスの世界進出の流れで世界中に広がったのが”フリースタイル”です。
グレコローマンスタイルとフリースタイルの最大の違いは攻撃範囲でフリースタイルは相手の全身全てに攻撃可能ですがグレコローマンスタイルは相手の上半身しか攻撃が出来ません。
タックルがあるのがフリースタイルでタックルが無いのがグレコローマンスタイルだと覚えればわかりやすいです。

そんなレスリングがMMAの試合でどう使われているといったらタックル四つ組み(脇に腕を差す攻防のこと、基本的に相手の内から組めた方が有利。)など現代MMAでの組みの攻防全般に使われています。それくらい重要というわけです。

四つ組みの攻防の写真。この場合は右側の選手の方が相手の両脇に腕を差せている両差しという状態なので有利。

またMMAではスタンド(立っている状態)で試合が始まりますがグラウンド(寝ている状態)の攻防がルールで認められているので、相手をグラウンドに組み伏せることに特化した格闘技であるレスリングがMMAで使われるのはそんなに変な事ではありません。

その重要性を記事を書くツールであるnote的に例えるとMMAでレスリングは助詞の役割をします。例えば「髪を切る」という文章があったら主語は「髪」、述語は「切る」、助詞は「を」ということになります。この”を”が無かったら文章としては破綻することはnoteを読んでいる皆さんなら当たり前に理解しているでしょう。
MMAにおけるレスリングもこういう存在です。あるのが当たり前すぎて気にしませんが無いとそのものが破綻していく要素というわけです。

そんなレスリングを駆使した代表的なMMA選手と言ったら元UFCライト級王者で29戦29勝の無敗のまま現役を引退したハビブ・ヌルマゴメドフ氏でしょう。

父親のアブデュルマナプ・ヌルマゴメドフ氏がロシアでは有名なサンボのコーチであったことから幼少期からレスリングやサンボ、柔道を叩き込まれており昔は熊と練習していたほどです。サンボでは国内王者、世界王者を2度ずつ輝いたことがあります。
そのバックボーンから想像できる通り非常に強いグラップラーであり、試合では無尽蔵のスタミナとフィジカルで前進し続けて相手をケージ際に押し込んでからテイクダウンを獲ります。その後強烈なパウンドや一本を獲るスタイルで無敗の戦績をしました。
相手にケージを背負わせるプレッシャーの掛け方や四つ組みの強さ、組んだ後に自分の頭の位置をうまく使って相手をコントロールする技術は必見です!

そんなハビブ氏の個人的見ておくべき試合は引退試合となったジャスティン・ゲイジー戦です!強烈なカーフキックとテイクダウンディフェンスが強いゲイジー選手は当時UFCライト級で無双状態だったハビブ氏の最後の対抗馬でしたが、その選手すらコントロールするハビブ氏のレスリング力はすさまじいものがありますので是非見て下さい!



③柔道

日本で1882年に加納治五郎が創った柔道という競技ですが、現在では204の国と地域が国際柔道連盟に加盟していたり1964年の東京オリンピックからオリンピックの正式競技になっていたりと世界的にも競技人口が多い競技です。
実際柔道は学生の体育の授業だったり習い事だったりで多くの人が実際に触れる機会が多かったりと非常になじみ深い競技の1つと言えるでしょう。

そんな柔道がMMAの試合でどう使われているかといったら相手を崩す投げ技相手を動かさない固め技などがありますが、その中でも一番柔道的な技術は相手の足を引っかけて崩す技術です。

東京オリンピック100㎏級金メダリストのウルフ・アロン選手の大内刈り。自分の左足で相手選手の右足の膝裏を刈り取っている。

利点としてはレスリングのタックルとは違い足を掛けるテイクダウンは大きな予備動作が無く、また四つ組みや打撃の攻防などで上に意識がある状態や重心が上にある構えだと足への攻撃まで意識が向きにくいため、そういうシチュエーションだと足を掛けるテイクダウンが良く刺さります。

そんな柔道を駆使した代表的な選手と言ったら初代&第3代RIZINスーパーアトム級王者で当時女子MMAでは世界最高峰の団体であるInvicta FCアトム級王者にも輝いたことがある浜崎朱加選手でしょう。

全日本強化選手に選出されるほどの柔道を生かした極めの強さとボクシングをベースとしたパンチの強さを連結させたスタイルで長年女子アトム級の頂点に立っていた選手です。
その極めの強さが注目されがちですがそこに行くまでの足を掛けてのテイクダウンやリストコントロールからのアームロックなど、寝技に行くまでのテクニックの幅がとても多い印象です。
そんな浜崎選手の個人的見ておくべき試合は初代RIZINスーパーアトム級王者決定戦である浅倉カンナ戦です!レスリングがバックボーンの浅倉選手と柔道がバックボーンの浜崎選手の対決となったこの試合はどちらがより良い形のテイクダウンを先に獲るかが勝敗のカギなのですが、レスリングを生かしたテイクダウンのアプローチをする浅倉選手に対して浜崎選手の相手の腕にプレッシャーを与えて意識を持たせてから足払いでのテイクダウンといったようなテイクダウンへのアプローチの豊富さに注目してみて下さい!


④ムエタイ

立ち技最強の格闘技と呼ばれているムエタイという競技ですが、その歴史は13世紀のタイのスコータイ王朝では既に軍隊格闘技として根付いていました。
現在はタイでラジャナムダン、ルンピニーという2大殿堂の大会を中心に非常に人気がありタイの国技にもなっています。またキックボクシングの流行を受けて世界中でその競技人口を増やしています。

そんなムエタイがMMAの試合でどう使われているかといったらヒジ打ち前蹴りといったムエタイ特有の打撃が多く使われている印象ですが、一番の影響は首相撲などの四つ組みの技術です。

右手で相手の後頭部をロックして膝の攻撃を相手の顔面にヒットさせる。顔を下げさせることで相手の体が前傾状態になる崩れを連結させる。

このムエタイの首相撲があることで組んだ瞬間に脇を獲りたいレスリングや足を刈りたい柔道とは違う、組んだ瞬間に相手の頭を直接つかんで近距離でも強烈な打撃を入れられるムエタイの首相撲の技術は特にレスリングバックボーンの選手に刺さる技術でもありました。その理由としては組み際では基本的に脇を獲りたいレスリングバックボーンの選手や相手を崩すために近距離での組みをしなければいけない柔道バックボーンの選手とは違い、ムエタイバックボーンの選手は割と遠い距離からでも首相撲の組みが可能という組む位置や距離のアドバンテージが大きいのかなと思います。

そんなムエタイを駆使した代表的なMMA選手といったら元UFCミドル級絶対王者でUFC連勝記録やタイトルの最長防衛日数を持っている伝説的な選手であるアンデウソン・シウバ選手でしょう。

当時UFCミドル級は強靭なフィジカルを持つレスリングバックボーンの選手が多くいましたが、そういう選手に対してシウバ選手は自身のリーチの長さを生かした前蹴りや首相撲で多くの選手を倒しUFCの最大連勝記録の16連勝という大記録を打ち立てました。
レスリングの項目で少し書きましたが、レスリング技術を生かした四つ組みの攻防をしたい場合は相手の脇を獲ることが非常に重要です。しかしムエタイの首相撲は相手の脇を獲るのではなく相手の頭に両手を置いてロックするものですので脇の差し合いに付き合うことなくすぐに攻撃に移ることが出来ます。連勝記録や王座防衛記録などはもちろんシウバ選手の飛びぬけた実力があるからですが、このムエタイの特徴に当時のUFCミドル級の選手のファイトスタイルにうまく当てはまっての連勝であると個人的には考えています。

そんなシウバ選手ですがとにかく試合が面白く試合中に相手を挑発して相手の出してきたパンチを紙一重で避けて逆にカウンターのパンチで倒したり、前蹴り1発でKO勝利したりととにかく見ていて非常に面白い選手ですので、下に貼っているUFCでのトップフィニッシュ集を是非見て下さい!



⑤おわりに

今回の記事はいかがでしたでしょうか。
割とMMAを見始めると組み技はやっていることがわかりにくかったりとつまずきやすい点ではあると思いますが、この要素を知るとMMAが今の何倍にも面白くなるのでいろんな試合や動画を見て自分のペースで良いので知識を身に着けてもらえると嬉しいです。もしそのとっかかりにこの記事がなれば幸いです。
タイトルにある【】部分についてですが、割とまだあまりMMAを知らない方たちへ向けたマガジンシリーズのタイトルとしてMMAミリしらキットという名前を付けました。内容としてはMMAを見ていく中で疑問に持ちそうなところや業界内では当たり前に浸透しているものの一般の人は良く知らないコンテンツについてなどを紹介するものとして考えています。
とりあえずここの記事を読んでMMAに関する知識や構成する要素に興味を持っていただけたら嬉しいです!

またこの記事や今までのnoteに対しての感想や意見はドシドシお待ちしていますのでコメントやTwitterで反応や拡散をしていただけるととてもうれしいです!泣いて喜びます!

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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