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16年ぶりの

小学生の夏休み、両親が仕事で家にいない平日は毎日祖母の家に通っていた。
毎年この時期になると祖母はずっと高校野球を観ていた。
私としては子ども向けのアニメが観たかったので、
ねったまくんじゃんけんに興じていた事以外ほとんど記憶はない。

ただ、たった1年だけとても記憶に残っている年がある。
祖母がとある高校の投手のファンになった。
毎試合必死になって応援していたし、
ほとんど使うことのなかったガラケーのカメラでTVの映像を撮っていた。
彼のチームは順調に勝ち進み、決勝へ駒を進めた。
決勝戦は両者一歩も譲らない接戦となり、
翌日再試合という非常に稀な事態となった。

そして翌日、彼は相手のエースを討ち取り見事優勝した。
そう、斎藤佑樹さんである。
祖母は「佑くん」と呼んでいた。
その後はご存知の通り、彼はプロではなく大学へ進学した。

それから2年後の冬、祖母は亡くなった。
彼がプロ入りするところも、プロで投げる姿も見ることはできなかった。
そして引退するところも。
彼の活躍、故障、1軍登録、抹消さまざまなニュースが出る度、我が家では祖母の話をした。

そして今日も。
祖母が映っている写真を母が持って、家族でTVを観た。
高校野球の始球式という大役を務めた彼はの姿はとても格好良かった。

「佑くん、とっても良い球を投げたよ。
爽やかな笑顔で選手に声をかけてあげて、
あの頃より大きくなって甲子園に帰ってきたよ。」

そう祖母に伝えたくなる1球でした。

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