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こうして話は、頭へと戻る。

「そんなモンだよ。みんな、イラストとかボヤっとしか見てないよ」

と、横に座る夫が言った。

何が発端でそんな話になったのか?徒然と思い返してみる。

作品をぼんやり鑑賞する人が多くない?

「映画を見るにしても、音楽を聞くにしても、何するにしても、集中力の足りない人が増えてきた気がしない?」

と、私がボヤいたのが発端だった。

「そんなモンだよ。みんな、イラストとかボヤっとしか見てないよ」

やや憮然としている私を横目に、イラストレーターの夫が達観した様子で答える。

「そうなの?」

「だから、いっぱい説明が必要なんだよ。君が思うより、ちゃんと見てる人なんて少ないよ」

「なんでだろう?」

「『お客さま』になるのは、意外と難しいんだと思うよ。なのに、お金払ったら『お客さま』になれる、って勘違いしてる人が多いんじゃない?」

確かにそうかもしれない。自分の経験に照らし合わせて、思い当たる節がある。

自分一人くらい平気、じゃないんだよ

音楽フェスで、最前列付近に座り込んでいる人がいた。自分が好きなアーティストがフェスの後半で出演するから、早めに来て座り込んで場所取りしているのだ。

立つのです...盛り上がれとは言いません...せめて、立つのです。

はたまた演劇の公演で、グウグウと眠り続ける人がいた。お目当てのキャストがいるらしく、その人が出演しているシーンだけ目をさますようだ。

起きなさい...面白さの感じ方は自由です...でも、せめて起きなさい。

バタフライエフェクト、という言葉がある。

その人にしてみれば「自分一人くらいがこういう行動をしても、大した影響はないっしょ?平気っしょ?ウッスウッス※」と思っているのかもしれない。

でも、あなたが起こしたざわめきは、意外と大きな波紋を起こしてるんですよ?全てを台無しにする可能性があるんですよ?と、その人の両肩をガシっと引っ掴みながら、トクトクと言い聞かせたくなる。

※この喋り方は、私の完全な偏見。事実とは異なります

1から1,000,000まで文章で説明された作品

そもそも、なぜ「集中してない人が多い」なんて話になったのか?

もう少し、思い出してみる。

最近、自分の好きな作品が、的はずれな内容で批判されたり、誹謗中傷されたりすることがあった。私は、ちょっとムッとなった。

...嘘です。大分、ムっとしました。ムムムムッ!!となりました。

その後アーティスト側から、作品に関する大変丁寧な説明文が公開された。

すると批判していた人たちが、手のひらをクルっと返して称賛し始めた。絶賛に近いものもあったりした。

ムムムムムッ!!!

文章で説明されたことは、全て作品内で表現されていたと思うのですが?作品をしっかり確認せずに批判していた??結局、文章で1から1,000,000まで説明しなくちゃ伝わらないのなら、その歌は、その映像は、その絵は、一体なんだったのか?

そんなことが、ここ最近、何回か繰り返されていて、ちょっとションボリしてしまった。


だから、横で黙々と絵を描き続ける夫に問いかけたのだ。


「映画を見るにしても、音楽を聞くにしても、何するにしても、集中力の足りない人が増えてきた気がしない?」


こうして話は、頭へと戻る。


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