だから山中教授を応援したい

 京都大学iPS研究所が行なっている「細胞備蓄事業」への資金援助を国が打ち切ろうとしている話について、私の感想です。

 5年以上前のことになると思いますが、特発性間質肺炎の治療を続けていても効果が出ずに、もう元のように治る見込みはないと悟っていた頃、私は「iPS細胞」にすごく期待していました。同じように思っていた難病患者は、今もたくさんいるはずです。

 当時、山中教授は、iPS細胞について「iPS細胞で作った臓器を人間に移植することは技術的にも倫理的にもまだまだ難しい。それよりも難病の解明や創薬の部分で成果が期待できるかも知れない。」と言うようなことをテレビ番組か何かで話していました。“夢の再生医療”的な世間の期待と扱いからすれば、随分と誠実な人だと思ったことを覚えています。

 実際のところ、患者としたら臓器移植などしなくても、病気の原因がわかったり薬で治るならそれで良いと思っていましたから、この人なら信用できる、応援したいと思いました。

 その後は、有期雇用研究員の処遇改善のための寄付の呼び掛けから国内外の広告塔の役目まで、一人の研究者としてではなく話題にされることが多くなり、いつも国民に向かって何かをお願いしていて、このままでは人間的に燃え尽きてしまったりしないかと心配していました。

 限られた国家予算の中、しかも日進月歩の医学のこと、外からは見えないない政官学産それぞれの業界の思惑もあるでしょうし、今回の記事も“山中いじめ”のような単純な話ではないと思います。

 それでも、今回も私が山中教授を応援したいと思うのは、「免疫抑制剤」に対する考え方です。

 免疫抑制剤は、臓器移植後の拒絶反応を抑えるために飲む「命の薬」みたいなもので、私も毎日2回必ず決められた時間に飲まなければなりません。本当にありがたい薬なのですが、やはり生活に一定の制限がありますし、副作用もあります。また、費用面では10割負担なら、他の薬を合わせると月に約10万円以上になります。正直なところ、いろいろな意味でこの先も同じように続けていけるのか不安です。

 山中教授は、より拒絶反応が起きにくいオリジナルに近い臓器を目指していますが、お金を出す方は、早い話「免疫抑制剤を使っても、今よりは良くなるんだし、いいじゃないか」という立場です。

 一概にどちらが良いとは言えないですが、患者の立場からすると、助かった後のことまで考えてくれる山中教授のような人が、第一人者としていてくれることは本当に心強いし、ありがたいです。だから、これからも応援します。

 それと、これは素人考えではありますが、免疫抑制剤の使用やガン化を本当に減らすことができるのであれば、細胞備蓄事業の研究費は、将来的な医療費の抑制で十分に回収できると思います。でもそれは、既存の製薬業界にとっては死活問題ですから、簡単には進まないでしょう。進むとすれば、中国やインドなど新興国と企業が一発逆転を狙って、本格的にiPS細胞関係の人材の獲得に動き出したときではないでしょうか。

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 ■私の闘病と移植体験まとめ

『片肺はデフォである』 https://katahighde.jimdofree.com/

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