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古い伝記映画『楽聖ショパン』と『愛の調べ』、現在評価の比較

『楽聖ショパン』と『愛の調べ』、クラシック音楽をテーマとした古い映画をふたつ見た。その比較と備忘録。

(1)基本データ

『楽聖ショパン』
■1945年アメリカ映画。フルカラー。
■ショパンの生涯。
■第18回アカデミー賞では6部門でノミネート(受賞はならず)。

『愛の調べ』
■1947年アメリカ映画。白黒
■クララとシューマンの結婚生活と、横恋慕する若いブラームスの話。
■女優のキャサリン・ヘプバーンが今でも有名(らしい)
■ピアノのルービンシュタインが有名(らしい)

(2)ふたつの映画の現在の評判

1940年代アメリカ制作でテーマも似てる。アカデミー賞6部門候補の『楽聖ショパン』の方が当時は高評価だったんじゃないかな。
でもAmazonプライムの評価★は逆。やや驚いた。

『楽聖ショパン』amazonプライム評価: 3.7 · ‎34 件のレビュー
『愛の調べ』 amazonプライム評価: 4.3 · ‎50 件のレビュー

Amazonレビューに★を付けるのは、最近見た人だろう。
自分も初見。ショパンもシューマンもよく知らず、映画の前評判も知らず、クラシック音楽と古い映画繋がりで、Amazonが薦めるままに見た。

(3)伝記映画として見てみると

『愛の調べ』は、クラシックファンならよく知る(…とレビューに書いてあった)クララとシューマンの結婚生活とクララに求婚する若いブラームスのエピソードを、丁寧に描いている。

『愛の調べ』冒頭文-
年代 背景 出来事など 歴史とは異なる部分もあるが、基本的な流れは事実に基づくものであり、音楽界の輝ける一時代を描いたものである

エピソードを地味に積み重ねた最後の最後に、本当のテーマが強く出る。ゴシップ的な三角関係の結末ではなく、じわっとくる意味あるエンド。
この、史実に正確 (みんなが共有する有名人のイメージに忠実)ということがまず、現代でも受けいられる要素なのかもしれない。

それに対して『楽聖ショパン』は、史実関係がめちゃくちゃだ。
そう、この映画見て真っ先に言いたくなるのが、

『楽聖ショパン』は、ショパン伝記としては不正確!!
よく知らない人はそのまま信じちゃダメ!!


この映画を語ろうとすると、どうしても前提にこれが来る。正確じゃないから★は減点。そんなレビュー見てから映画見る人も、まず『正確じゃないから』という否定感情を持ってしまう。

しかし『史実に正確じゃない』から評価が下がる、
このきらわれ方はもったいない!!!!!!

『楽聖ショパン』も、なかなかいい映画なのですよ!
『愛の調べ』の良さは、他の人のレビューを読めばわかると思うので、『楽聖ショパン』の見どころ、好きなところ、いいところを語ってみます。

(4)映画『楽聖ショパン』好きなところを語る

とりあえず自分が好きなところをあげてみると…。

エルスナー教授のキャラが面白い。伝記から寓話へ。
ショパンと一緒にパリへ行くエルスナー教授のキャラがとてもいいんですよ!!(実在するエルスナー教授は音大学長でショパンと一緒にパリへは行かない)

人を煙に巻きながら、嘘かと思うと真実を語る、ものがたりを動かす狂言回し。面白い。詐欺師っぽいとこ含めて好き。
このキャラのおかげで、有名人の伝記というより寓話性が強くなる。ひとりの実在した天才の話が、自分の日常的な疑問やテーマにつながっていく気がする。

■音楽映画なので、ピアノの演奏シーンが一番の楽しみ。
映像なしでも、気の入らない演奏、気負った演奏、ノリノリ、ションボリがわかる。感情の揺れが音で伝わる。ラストの鬼気迫る演奏が良かった。死ぬ前の最後の炎のゆらぎ。謎の解放感。盛り上がる。好き。

■演劇的な構成と言葉、古典的なカメラワーク
リストとの握手エピは秀逸。ろうそくの演出もステキ。
カメラワークや美術はまるで舞台劇を撮影してるよう。扉を開けて右から入ったら左へ去る。流れも舞台の台本見てるよう。
主人公は唐突に死んで終わる。ここはオペラ的。
(死んだあと彼がなにを残したか、考える余韻でエンド)

言葉は最小限。練られてると感じる。何度もじっくり見た後に、じわっとにじみでるような美しさがある。

web雨宿りpage0026

(5)映画を見た後、自分の持ってるテーマへ向かう

気づいたらわたしはこの映画を毎日見てた。主にBGMとして、ときにはがっつりセリフや構成メモったりしながら。

欠点をあげるとしたら古いということかな。
現代を基準とすると、古い=悪い(改定前)。
映像は動きも少ないし、退屈と言えばそうかも。
でも自分は好き。古い映像の良さをたくさん発見する。
落ち着いてゆっくり考える余地がある。

悪い点はやっぱり、伝記映画としては『正確じゃない』こと。
伝記と称するから『間違ってる』と文句言いたくなる。『愛の調べ』のように冒頭に注釈入れればいいのかも。

今、ショパンくん(謎多き男)について調べたり曲を聴いたり描いたりしてます。史実エピソードを映画のためにどう変えたのか??よりショパンの本質を表そうとした痕跡なのかもしれない。古典映画はシンプルで完成度が高いと感じる。もう少し調べたい。

『楽聖ショパン』原題は A Song to Remember 
機械翻訳は『思い出の歌』『覚えておくべき歌』『忘れられない歌』。
『a song』と『to remenber』とは、なにを指してるんだろう?
歌(曲?人そのもの?)は1つだけを指すの?

今気になってるのはここ。
次見るときは、この視点で見てみようかと思います。

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