ロゼットは春待つかたち床じゅうに教科書ひらくその野に眠る 久永草太『命の部首』
ロゼットは放射状に葉を広げることで、効率よく日光を得るための草の形。タンポポの葉などを想像するとわかりやすい。おそらく人を中心にして、教科書がたくさん開かれた状態で床にあるそれをロゼットと重ねている。像がクリアに浮かぶ。
「獣医師国家試験」という連作にあるので、この歌の「春」は文字通り季節の春が来ることと、合格した未来がくることと両方だろう。そうすると結句も、単なる睡眠と冬眠(春を待つというニュアンスで)の両方の含みを持つ。学生らしい、というとまとめすぎるようで言いにくいが、