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Fagus. #8

「チョピン。。。」

「チョピン。。」
「・・・チョピン。。。」
「チョピン。。。。」
ループスが足を止める度に、水が滴るような音がついてくる。
( ・・ループ。)
アピスが耳打ちし、サァっと林間を数十kmを一気に走り抜ける。
スゥっ、、と足を止めるとまた
「チョピン。。。。」
と、ついて来ている。
ループスは振り返り、声なき威嚇をする。
「。。随分便利だね。」
追っ手に、なんとなく見当が付いていたアピスは、ずっと無視して切り抜けようとしていたが、ついに観念した。
「何か用?」
振り返ると、ループスに怯えるミズキ、ヒグチが水球にぶら下がっていた。
試しにループスへ、森の中を縦横無尽に走るよう伝え、追っ手を逃げ切る予定だったが、ミズキを纏う水球は高速かつ正確に動けるほど高性能のようだ。
にやけ顔を更ににやつかせ、
「バンドやろーぜ!」
速球で無神経なヒグチの返答がきた。
「なぁなぁ、あんたの歌はやっぱすごいよ!世界をひとつにする力がある。我らのバンドのボーカルは貴方しかいない!キミしか考えられない!ユーの声が必要だ!
なぁ、ボクらのバンドにジョインしないか?」
なぁなぁ、なぁ・・・、と想像通りヒグチが畳み掛けてきた。
はぁあぁぁぁぁぁ.....
と、アピスは大きく溜め息を吐き、
「1.あんな攻撃的なドラムを叩くカエルと音楽しない。
2.演奏を聴いたことないギタリストとバンド組みたくない。
以上!」
端的に捲し立てて去ろうとした。
「…。。少し、、、、すこし、待って、ください。。」
消え入りそうな声で、ミズキが許しを乞うも、振り返りもせずループスが歩を進める。
すると...。
ミズキのギターが森中に響く。

ヒグチヨハクです。小説「planktos」連載中。よろしくおねがいします。