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東洋医学講座 215

〇心と洪脈

▽洪脈とは

洪脈は夏の標準脈であります。春夏秋冬に応ずる脈を、四季脈、または標準脈といいます。

洪脈は、体表に浮き上がっていることが条件です。春の弦脈よりさらに強大であります。弦脈とはだんだん浮き上がってくる過程です。それが最大のところにきた脈が洪脈です。

洪脈にもいろいろ種類があります。夏の中にも熱いときや涼しいとき、また寒いときがあるように、洪脈でありながら弦脈的になったり、沈脈的になったりします。

人体は体温36.5℃という恒温を保つために生理しています。36.5℃という恒温を外れますと人は不健康であり、それがずっと下がったり上がったりし過ぎると死ということになります。有限の幅を35℃から40℃とすれば、それを割ると死を意味します。この36.5℃の体温を保つために人間は生きています。したがって、この恒温の上に立って、色々と脈を考える必要があります。

夏はこの36.5℃という恒温が上がりやすい条件になっています。したがって、冷やさなければいけません。体が熱くなる条件と、それを冷却しようとする条件、この二つが一致したときに洪脈になります。しかし、病脈の場合は多少違います。その場合は、外側の気候に関係なく内側が熱くなっています。したがって、冷却しなければなりません。そうしますと洪脈になります。それが体表に脈が浮かないで沈んでいたら、冷やせないからです。

沈で洪をうつなど、反対側に脈の場合はない熱が出ていることを示しています。夏でありながら冬の脈をうつのは、体力がなく体全体が冷えている証拠です。反対に本人は寒がっているのに脈が浮いているには、一過性の発熱状態なので、これもよい状態の脈ではありません。要するに、脈状は体内における熱の表現をしています。夏には洪脈をうつ、これが平常脈であります。

▽脈状はなぜ変わるのか?

夏に洪脈をうつ、これはからだの中が夏でない状態、つまり肝臓が中心になって働き、心臓の働きが落ちている場合に起こります。

緩脈の場合には、これは濇脈と洪脈の中間であります。洪脈と同じ太さですが、流れが少しゆるくなり、弱くなる状態です。長夏で暑さの中にも少し涼しさが加わっているわけであります。心や肝より脾や肺が少し力が増してきたということであります。身体の中でどれかが弱くなりますと、その代理をするものが必要になります。その代表する系統によって脈状が違ってきます。濇脈になるということは肺が中心に働いているということであります。

肺が中心に働くときは、外側が冷却されているときです。肺は体表を主に司っています。濇脈のときは心や肝や脾の力が弱まって、肺や腎の力が勝っているわけであります。

沈脈の場合は、冬が正常脈であり、人が旺んに働き、後の臓器は相・休・囚・死の状態になっています。

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