見出し画像

東洋医学講座 279

〇脾と肌肉

▽人体おける大地〝脾体〟

▼食事と人体の生成

脾気の働きは、日常においては食事であります。胃腸を使う働きというのは脾気であり、食事として口に入れてよく噛むということは、物体を殺滅するということになります。

先人は「一剋なくして一生なし」といっていますが、これはある物質を殺滅することによって人間の生命を得るということです。何のために殺滅が行われるのかといえば、それは新しい生命を得るためであります。これは一種の変化の作用です。つまり、人間はいつも同じではなく、昨日、今日、明日と刻々と変化します。形、肉体を生成するのは食事であり、食物が口に入り、酸素によって燃化され、一生をつくる、それが天気の作用です。脾気、肝気、肺気、腎気を別々に考えることはできないわけであり、これらは全部が一緒に働いています。したがって、何が主体で働いているときか、また何を主体としていたときか、と考えることが必要であります。

例えば、食事で考えますと、腎気という消化液と血液が必要になります。また、肝気は脂肪貯留や殺菌作用を担い、それから肺気は空気の取り込みを支援します。食事のときも、ただ脾や胃だけが働くのではありません。では、何が主体で食事をするのかといいますと、それは脾・胃の働きであるということです。

もちろん実際には全部働いているわけですが、考え方としては、人間の主体性、特徴をみるのと同じことであります。同じ顔形をした人間でも、個々によってタイプが違っています。例えば、心旺タイプ、肝旺タイプなどというように全部が総合的に働いている中で、それぞれの特徴を見ます。これは東洋に非常に優れた物の見方であります。

食事をするとき、脾・胃が主体として働きます。順調に脾・胃が働くと、他の全部の機能も順調に働きますが、例えば、過食をした場合には、どこに負担がかかっていくかといいますと、相剋の現象として出ます。つまり、脾・胃が亢進します。

亢進とは、自分の力以上に働かされることをいいます。つまり、無理をして働いています。亢進したとき、どこに負担がいくかといいますと、それは相剋のところにいきます。弱ったときにどこが助けてくれるかといえば、それは相生の父母か、自分と比肩である同等の力を持った友人に助けを請うなります。これは根本の原理を知っていれば理解できるかと思います。

過食すると、症状としては身が重くなります。そして、脾・胃が亢進し、余分な力が必要とします。同時に土剋水現象として、腎の方へ相剋現象が起きます。

脾臓の症状と腎臓の症状とはかなり似ています、「だるい」という症状は脾と腎双方の症状です。脾の症状、すなわち腎の症状といっても差し支えありません。

自分の体力に適応した食事量をとっているときは眠くなりません。よく食後に眠くなるという人は食べ過ぎています。この眠くなるという現象は腎の働きによります。腎は、昼間は目を開いて物を見たり、物を考えたりする働きをもっています。つまり、動の源となっています。したがって、眠くなるということは、腎が昼間に働く力がなくなっているということであり、結論からいいますと、腎が弱っています。

眠くなったり、身体がだるくなったりするのは、ことに病人はよく理解できるかと思います。これは、自然治癒の腎の力が消化の方へ持っていかれているからです。

また、身が重くなるということは、肌肉が重くなるということです。したがって、脾・胃は肌肉の系統であることが分かります。先人は、脾・胃を病むと四肢倦怠するといっていますが、四肢だけではなく、全身が倦怠するということであります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?