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東洋医学講座 294

〇脾と歌

歌う、語る、話す、読経するなどは、生理作用として脾を賦活させます。しかし、体力以上に歌いすぎたり、しゃべり過ぎたりして、脾を傷つけます。

▽発声と臓器の関係

歌というのは、発声を変化させながら声を伸ばしたり、縮めたり、休んだりして歌うということです。話す、語ることと似ている発声であります。他の五行発声音と比較すると、木の場合は呼ぶ声です。つまり、おーいと呼んだ時の体の状態はどうなるか、実験すると分かるかと思いますが、へその上辺りに力が入り、とくに肝臓の辺りに力が入るかと思います。

大きな高い声を出して呼ぶ声は、遠心性の働きです。甲高い声といいますが、同じように歌でも大きな高い声を出すことは、土性の中で肝気が働くということになります。

笑いの〝ハハハ〟は前述の呼ぶ声とは違って、へその上辺りから真っすぐ上に突き上がってくるような感じであります。このような笑いは心臓を賦活させます。心の働きは全身を動かすことで、動かすという字に、人べんをつければ、働くになります。働けば福が入ってきます。客観的にみても、渋い顔の人よりも、笑顔の人の方が人が寄ってきます。だから、〝笑う門には福来る〟といいます。ただ、笑いも度を過ぎると弊害があり、なんでも中庸がいいというわけであります。

歌うと話すは少し異なります。歌の場合は、力を入れすぎると音が崩れてしまい、あまり声が小さいと発声にもなりません。ちょうどいい音のところで上下があるわけであります。近年は、木気が余計に入った歌が多くなっています。歌にも木火土金水があります。民謡などは土性で、中庸音です。土はいつも土台であり、中央なので、全部を包含していることになります。また、木気は直情性で一本気で、高い音声であります。

歌は高音ばかりではありません。土性の中の木火土金水がありますが、標準の歌というのは、土性を中心としたものです。これは分析したものを組み合わせていけばよいわけであります。

また、嘆いたり、うなったりするのは、低音であり、力は強いのですが、ほぼ下降性の声であります。さらに、金気は下降性で固まる性質を持ち、低音になります。うなるような詩吟は、土性の中の水系のものといえます。

語ったり、話したりするのも同様です。高い声で話す人は肝旺タイプで、腎旺体の人は低音であります。脾臓との関係は、沢山おしゃべりをすると、黙っているときよりもずっとお腹が空きます。そのようなことからも、消化器系に関係していることが分かります。一か月も口をきかないでいると、気分は何となく沈んでいきますが、逆に頭は冴えてきます。黙っているというのは腎が盛んに働くということです。あまりしゃべり過ぎると深い思考はできません。

日常、よくしゃべる人は間食が多いのであります。逆にいえば、しゃべると消化・吸収がよいので、たくさん食べられるのかもしれません。しゃべって、食べて、また、その食物の質が土性のものであれば太るのは当たり前であります。心旺タイプ、脾旺タイプはよく太ります。そういう人は、土性食品を少なくし、金性・水性の食品を多くとることを心掛ければ太りません。

歌も笑いも度を越え過ぎてはいけません。全て中庸にすべきであります。食べるものを変えたり、性格を変えたりすることは大変なことでありますが、色々な点で反省する必要な場合もあるようです。

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