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東洋医学講座 270

〇脾にはどのような働きがあるか

▽脾が人体の〝土盤〟

宇宙生成の考え方を人体に応用しますと、脾は人体の土盤に当たります。したがって、全身は全て脾であるという考え方であり、木火金水の天気の働きに相当するものは、人体では木は肝に相当します。肝臓という臓器ではなく、目に見えない働き、つまり肝気であります。

木は天気、人体では肝気であります。肝臓という臓器は形をつくっている肉体、すなわち土性のもので、厳密にいえば肝の家ではなく、脾体からの借家であります。要するに、脾体の一部を借りて、肝の働きをしているのに過ぎません。他臓もこれと同じことであり、心は心臓を脾体より間借りして心気の働きをしているのに過ぎず、心は搏動がその働きであります。このような根本を忘れて、末梢の働きのみを追っていると分からなくなってしまいます。

脾は全身の四肢体幹を栄々しているだけではなく、目に見える形全て、肉体全てを成しています。したがって、脾の機能が低下してくると、全身がだるくなってきますが、これは脾が全身を司っているからであります。夏、暑くなると体がだるくなるのは、夏は脾旺期で、このときに脾に力がないとだるくなります。

次に脾の本質をさらに知るために、ここで宇宙生成の天の気と地の気の働きを説明します。

天の気は気体であり、陽であり、人間の目には見えません。しかし、地の気はこれと反対に陰です。宇宙成長期には、絶対零度に近い冷厳な宇宙霊気があり、これにわずかな暖気が入り込み、低気圧と高気圧がぶつかり合います。このような現象は、そこに動きが生じ、熱を発生させ、熱によってさらに動いて発熱します。これを何回も繰り返して、時とともにしだいに回転が大きくなります。マイナス度が低ければ低いほど、それが冷熱の差が大きく、回転も激しくなります。

このような強烈な回転を経て発火し、火の玉のようになります。そして、宇宙の元々の働きである冷却収斂作用にあい、次第に冷えて星のような物体になります。自然真理方程式によれば当然そうなりますが、地球も宇宙の収斂作用で固まって物体になったものであります。形は収斂性でつくられるので陰の働きです。陰というのは収斂する働きであり、それによって物体ができます。気体は収斂されると液体となり、さらにそれが収斂されると物体になります。

例えば、水は物体と気体の中間にあります。それが冷やされると形づくられて物体化し、逆に熱せられると気体になります。気体が冷気に入ると水滴になり、さらに熱せられると発散気発します。つまり、遠心性に働き、冷やされて固まったものが形・物体であります。

人体についていえば、四肢体幹いう体を成しているものが脾です。現代医学でいいますと、消化器をはじめとした肌肉・身体は全て脾系統であります。経絡の場合も、肉体は腎精が脾化してできているので、脾体も腎精体も同じであります。

脾・腎の大元の働きの経は、任脈・督脈の二脈から成り、親経ともいわれ、これから十二経の枝葉が出ています。

手の経については、横隔膜から上の経脈は手に集まり、横隔膜より上の臓器が根になります。そして、これらの経脈を中心に、三焦・心包の二経があり、その中心を成しています。心包経は土系であり、心に関与しています。包むという意味は全て土系の働きであります。土系が全てを包み、載せます。すなわち、心包経は心経の土系であることが分かります。

三焦は栄々の気で、これも脾土系です。したがって、心包経も三焦経も共に脾土系になります。足の経については、脾経・胃経が前面に陣取り、手のようにきちんとなっていませんが、土系が中心になっていることは確かであります。

脾について要約しますと、脾というのは土盤であり、その土盤の上で、心・肺・肝・腎の気が働いてお互いに協力し合っています。

▽脾の病変

脾の単病は四肢に直接出ます。他臓の影響によって脾が病むときは全身がだるく、その上に多の臓の特徴症状が加わって出てきます。脾の枝葉は肌肉で、その肌肉の枝葉は、主に四肢と肩背部に集中しています。

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