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日常短編シリーズ

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日常短篇シリーズ:何もない、何かある。

現在の頭の空っぽさと言ったら、ここ10年で1番だ。少し頭の中を見渡すくらいではなんの素材も見つからない。
不快なものを貯めないようにしていたら、少し歪で変なもの、興味が湧くものもどこかへ消えてしまったようだった。

でも暗くて見えないだけかもしれない。何故なら頭の中は暗闇だからだ。小さな懐中電灯で照らした足元くらいしか見えない。これ以上探すには歩き周る他ない。歩き周るには結局労力がいる。労力を使っ

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日常短編シリーズ:雨

雨が降っている。窓を開けて外を覗くと、アスファルトの所々に光が反射して、無数の波紋が浮かび上がっては消える。

外に出る予定がない時の雨は嫌いではない。家の中で聞く雨音は、心に安らぎを与える。
家の壁や地面、様々な場所から雨音が響く事で、自分が薄い膜に包まれているような感覚に陥る。
なぜ安心感が生まれるかを説明することは難しい。もしかしたらそれは遠い記憶を覗き見る事でしか解明できない謎なのかもしれ

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日常短編シリーズ:変わり目

※この記事ははてなブログにて、2020年9月21日に投稿した記事の再掲です。

これはフィクションであり、ノンフィクションの話でもある。

黒い革靴の表面を車のライトが滑り抜けてゆく。

既に日は完全に落ちていて、街灯や信号の光が闇に浮き上がっている。

少し肌寒い。半袖のTシャツで出てきた事を間違っていたとは思わない。昼間は確かにTシャツで丁度良い気温だった。何か羽織ろうか考えたが、まだ早い感じ

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日常短編シリーズ:隣のあんちゅわん

※この記事ははてなブログにて、2020年5月2日に投稿した記事の再掲です。

これはフィクションであり、ノンフィクションの話でもある。

新型ウィルスの感染拡大の影響により、家にいる事が多くなった。

僕がしている仕事は自粛の対象ではないため出勤は以前とさほど変わらずしているが、バンドの練習やライブができないためその分時間が空く。

こうなってみるとそれだけでも相当自由な時間が現れてくる事がわかっ

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日常短編シリーズ:その本を読みたい

※この記事ははてなブログにて、2019年9月24日に投稿した記事の再掲です。

これはフィクションであり、ノンフィクションの話でもある。

その本を読みきりたかった。

深夜1時を過ぎてバイトを終え、帰路に就く。1冊の本を読みかけていた。バイトの休憩中にも読んでいたが読み切れず、あと3分の1くらいは残っている。明日は忙しいし、読む時間はない。朝も早いので寝るまでの時間は限られている。

バイト先を

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