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考えて学ばない人、考えず学ぶ人。

 日本はアジアで最も、大人が学んでいない国であり、半数近い大人が何もしていないという。

ベネッセHPより。※パーソル総合研究所「APAC就業実態・成長意識調査(2019年)」のデータをもとにグラフ化

このデータは先日記事にした、「育休中のリスキリング支援」が大炎上した現象とも一致する。

 私も数年前までは、何も学ばない大人の一人だった。しかし学ぶようになった今振り返ると、私が学ばなかったのは怠惰だったのではなく、むしろあれこれ考えていたから学ばなかったのだとわかる。

なぜなら自分の生活に学びを取り入れることを真剣に考えれば考えるほど、「学ばなくても良い」という結論に至る可能性は高まっていくからだ。

不安を解消しないけど

 私は今資格の勉強をしているが、そのきっかけはネガティブなものだった。仕事のプレッシャーで精神的に弱り、何か他に食っていけるようにならなければ、という不安から始めた。

 ところが数週間して、その資格は「簡単すぎて誰でも取れるため、仕事にはならない」ものであることがわかった。不安をきっかけに学び始めたが、その内容は全くもって、自分の不安を解消してくれるものではなかったのだ。

それでも数か月経った今なお私は勉強を継続している。先日の記事に書いたように、学び始めてから心に余裕ができるようになり、メンタルもあっという間に回復したからだ。

よく考えも調べもしないで、思いついた資格を選んだのは大正解だった。もし将来の不安を解消してくれる学びを真剣に考えて探していたら、高難易度の資格勉強を選んで即挫折してさらに不安が増していたか、あるいはいつまでも悩んで結局何も学ばなかっただろう。

そもそも、何かを学んでもその不安が解消されることはない。その不安と対峙して解決するしかないのだ。しかし学ぶことで得られる自己満足感は確実に、不安に対峙する精神力となる。

生きていくのに必要でもないけれど

 「不安を解消してくれる学び」と同じく、「生きていく上で必要な学び」というのも存在しない。

 英語を例にするとわかりやすい。グローバル化が進む中で英語力が必要だと言われて数十年になるが、実際に英語を学んでいる人は8%に満たない。

マイボイスコムのHPより

客観的な状況だけでなく、主観的にも、英語力の必要性を感じる人の合計は59.7%、強く必要性を感じる人だけでも30%を超えている。

マイボイスコムのHPより

それでも英語を学ぶ人は少数だ。つまり私たちは客観的に必要でも学ばないし、主観的に必要だと思っても学ばないのだ。

これは怠惰を批判しているのではない。ほとんどの人が英語を学んでいないが、それでも社会は回るし、普通に人生を送ることができているのだから、英語の学習は本当の意味で必要なものではないのだ。

突き詰めれば、私たちの人生において必要な学びは存在しない。

だから自分の人生や仕事に必要なことを学ぼうと真剣に考えれば考えるほど、「これは本当に必要だろうか、役に立つだろうか」という疑問があふれ出てきて、「学ばない」という結論に至りやすくなるのだ。

もっと幸福度を高めてくれることはあるけれど

 さらに言えば、学ぶことよりも幸福度を高めてくれることは数えきれないほどある。

 例えば友達と遊びに行ったり、家をきれいな状態にキープしたり、料理に時間を使ったり、恋人と一緒にいる時間を大切にしたり、あるいはゲームをしたりする方が、学びよりも高い幸福感を得られるだろう。

だから真剣に考えれば考えるほど、学ぶことの優先順位は下がっていって当たり前なのだ。学びに時間を割かないということは、限られた時間の使い方を考え、合理的に判断しているとも言える。

ただし、学びには死ぬまで続けられるという力がある。幸福度を大きく高めてくれることのほとんどは、体力も気力も落ちていく中でできなくなっていく。その中で最後まで残るのが学びなのだ。

考えるから学ばない人、考えないから学ぶ人

 このように学びとは、不安を解消するものでもなければ、人生に必要不可欠なものでもない。そして幸福度を高めてくれることは他にいくらでもあり、考えれば考えるほど、「学ばなくて良い」という結論に至って当然だ。だから学んでいない人は、考えている自分に自信を持ってほしい。

また、不安だったり、「必要だから」という気持ちで学んでいる人は、肩の力を抜いてほしい。その学びをやめても人生が行き詰まることはないのだ。

単発の学びで得られる幸福感はごくわずかだ。しかし死ぬまでコツコツと積み重ねることができれば、何物にも代えがたい充実感をもたらしてくれる。そして学びを継続するためには、深く考えないことが大切だ。

効果も必要性も楽しさも考えず、なんとなく学ぼうと思ったことをとりあえず学べば良い。

迷わずいけよ、行けばわかるさ。

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