先進的なLGBT後進国、日本
日本はLGBT法案の成立に時間がかかったが、欧米で泥沼化している差別主義者罵倒合戦から一歩抜け出した。公衆浴場では身体的性別で入浴するよう、通知が出されたのだ。
欧米ではこれはトランスジェンダー差別であるとされる。たしかに身体的性別で区別されることはLGBTの人にとって「生きづらい」と感じさせることがあるだろう。
その一方で、男性器がついているトランスジェンダー女性が女風呂に入ってきたら、驚いたり、恐怖を感じたりする女性がいてもおかしくない。
そして大切なのは、そういう女性でも大半は、LGBTの人たちが生きやすい社会になれば良いと思っている、ということだ。
法整備を行う上で、トランスジェンダーの人が身体的性別で区別されるべき・べきでないという主張をすることと、その主張をしている人が差別的かどうかを同じにすると、欧米のようにお互いがお互いを差別主義者だと罵り合う状態になる。
そんな人たちに対して、「それは差別ではない」と示したことは、日本が欧米とは異なる形でLGBTの人たちの生きやすい社会を実現する第一歩を踏み出したと言えるだろう。
日本はLGBT関連法案ができたのが欧米と比べて遅いことから、LGBT後進国であるかのように言われることがある。しかし私は、日本はむしろLGBTについて先進的な国であると考えている。
欧米の法整備が早い理由
欧米のLGBTに関する法整備が早かったのは、歴史的な理由がある。それは法律で取り締まっていた歴史があるからだ。
アメリカでは1962年まで同性間の性愛行為を法律で禁止していたのである。
さらには1973年まで同性愛を精神疾患とみなしていた。
LGBTQを「病気」としていた過去をアメリカ精神分析医学会が正式に謝罪 - フロントロウ | グローカルなメディア (front-row.jp)
ドイツでも1871年から1994年まで男性間での性行為が刑法で禁止、つまり犯罪行為として法律に定められていたのだ。
特にナチス・ドイツにおいてはゲイやレズの人が大量虐殺されている。
ナチス・ドイツとホロコーストによる同性愛者迫害 - Wikipedia
フランスは1791年に犯罪ではなくなったものの、ヨーロッパ全体で同性愛は長いこと犯罪として扱われていたのである。
何千人の同性愛者を法律で定めて処刑したのだから、その過ちを正すには、法律を改めるという形になって当然だ。
日本のLGBT禁止法
それに対して日本では、明治5年(1872年)に「鶏姦律条例」が発令され、鶏姦(肛門性交)を禁止する規定が設けられた。しかし10年で消滅し、この期間だけが、日本で男性間の性行為が犯罪とされた唯一の期間だ。
しかもこの時期は明治初期、つまり日本が欧米化していった時期と重なる。つまりこれは同性愛を犯罪や精神疾患とみなす、当時の欧米の目を気にして制定されたものだと言われている。
日本人のLGBT差別
たしかに日本人がLGBTの人を全く差別していないとは言うことはできない。多数派万歳な傾向があるので、LGBTに限らず、何かしら少数派の人は生きづらさを感じることはある。しかし欧米の行ってきた差別とは次元が違うことは法律の歴史を見れば明らかである。
この構造は黒人差別と似ているところがある。たしかに日本人は黒人の肌を好奇の目で見たり、文脈によってバカにしたりすることはあり、それは差別的で良くないことだ。
しかし欧米は次元が違う。奴隷として鞭を打って自分のために働かせていたのだ。だからこそ彼らは反省し、黒人に対する差別的なことは許されないという空気を作っていった。
私たちは欧米人が過去にやっていたような差別を、LGBTに対してしたことがあるだろうか。
私たち日本人が思い浮かべるLGBT差別とは、大半の人にとっては、「好奇の目で見られる」「気持ち悪がられる」といったものではないだろうか。たしかにそれは差別的だ。しかし法律で処刑してしまえ!という発想は歴史的にもなかったし、現在もない。
先進的な後進国
そもそもの話として、法律で迫害を取り締まる国と、法律はないが歴史的に迫害をしない国だったら、どちら理解があると言えるだろうか。
LGBT関連法案成立が後進的であることこそが、日本がLGBTの人たちを欧米よりも受け入れてきた先進的な国である証なのだ。
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