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発達性読み書き障害って何?

様々な子どもたちと接する中で、教員には子どもの姿を適切に捉えることが求められます。今回は、千葉リョウコ著『うちの子は字が書けない』という漫画を紹介します。これは読み書きの困難さを抱える児童生徒の理解に役立つ漫画です。

発達性読み書き障害とは

正しく字が読めなかったり書けなかったりする人が世の中に一定数いることをご存知でしょうか。これは大人も子どもも関係ありません。

知能(IQ)的には問題ないのにも関わらず、読み書きに対して特異的に困難さを抱える障害のことは『発達性読み書き障害』(英語名:ディスレクシア dyslexia)と呼ばれます。学習障害、ADHD、ASDなどの発達障害の一つです。

親の育て方や事故などによる脳の障害とは関係なく、先天的に字の読み書きがうまくできないことが特徴です。字を書いたり読んだりすることは、できて当たり前だと誰もが思うことであるゆえに、『努力が足りない』など、理解があまり進んでいない障害でもあります。

日本語を母語とする子どもでは、この障害は実は8%ほどの出現率と言われています。これまで、この障害は英語など発音と文字の綴りが複雑な言語体系で顕著な障害だと思われてきました。例えば、英語では ch の綴りで choose /チュ/、school /ク/、machine /シ/ など様々な読み方をします。これは一般的な人にとってもかなり厄介です。逆に、日本語話者には発達性読み書きの障害をもつ人はいないと長らく考えられてきました。なぜなら、日本語のひらがなは発音と文字とが一致しているからです。『あ』は/ア/としか発音しませんので一対一で対応しています。これが日本語話者での発達性読み書き障害の認知があまり進んでいない原因の一つとなっています。

漫画の概要

小学6年生で発達性読み書き障害と診断された我が子『フユ』。診断が下りる前の母親の感じていた不安・違和感・葛藤、フユが学習で苦手なことや学校で苦労したこと、母親とフユがつらい思いをした経験、などが漫画で描かれています。漫画の物語の間には、専門家からのディスレクシアについての専門的な解説も挿入されており、教育に関わる人が専門的な知識や対応法を学ぶこともできます。

ディスレクシアの専門家から学んだ文字の読み書きができるためのトレーニングの詳細も記載されています。漫画表紙にある『父のハラはメタボ』というのがそのトレーディングで使用した単語カードです。この単語カードの作り方は、非常に示唆的です。文字が苦手、漢字を覚えるのが苦手など読み書きで苦労している児童生徒への指導をどう改善していくか参考にもなりました。

描かれている困難さ

漫画では読み書きに困難さを抱える当事者が直面する様々な日常が描かれています。例えば、

  • 学校ではどういう場面で苦労するか

  • 合理的配慮があっても一筋縄ではいかない難しさ

  • 将来に向けての進路選択の悩みやアドバイス

  • 周囲の反応やディスレクシアをもつ本人の葛藤

大人になれば手で書く事自体が大きく減る一方、学校では手で書いて学ぶことが非常に多いです。学校現場での子どもたちの様子を振り返ると、このようなことで困っている児童生徒の姿に思い当たる節があるのではないでしょうか。

まとめ

発達性読み書き障害(ディスレクシア)について描かれた漫画を紹介しました。文字を見て書くことは今でも学校教育での学習の中心となっています。その当たり前に困難さを抱える子どもが一定数いることを、ぜひ知ってほしいと願います。

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