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部活動帰宅途中での中学生死亡事故(米沢市)

連日猛暑が続いています。屋外での運動は命に関わるほどの危険な状況です。しかし、そのような状況でも夏休みとあって部活が行われています。その中であってはならないことが起きてしまいました。事件の概要と暑さの中で行う部活の問題点をまとめてみました。


概要

7月28日午前、山形県米沢市で女子中学生が歩道に倒れていました。部活後の帰宅中で熱中症になり倒れたとみられます。発見時には意識がなかったそうです。病院に搬送された後、女子中学生は死亡しました。

市教委の対応

会見で当時の状況の概要と今後の対策が以下のように説明されました。

  • 当時の状況

    • 8:30~11:00まで部活動を予定していた

    • 顧問の判断で練習を早めに切り上げた

    • 水分補給等現場での対応に問題はなかった(ただし、暑さ指数WBGTは測っていなかった)

  • 今後の対応

    • →各学校判断としていた部活動を、熱中症警戒アラートが出ている場合は原則中止にする。

暑さの中での部活の問題点

市教育長は現場での対応に問題はなかったとの見解です。しかし、対応に問題がなければ死亡事故は起きません。暑さの中での部活の実施には大いに問題があったと考えられます。以下に問題を3点挙げてみます。

熱中症警戒アラートでは防げなかった死亡事故

山形県内でWBGT33を超え、熱中症警戒アラートが出たのは、7月29日が今年初です。なお、死亡事故が起きたのは7月28日です。女子中学生が部活動の帰り道に死亡した事故時には、実は『熱中症警戒アラートは出ていなかった』のです。

記者会見では『部活動を、熱中症警戒アラートが出ている場合は原則中止』とすることで対応するとしています。しかし、今回の事故は『熱中症警戒アラートが出ていれば原則中止』では防げなかった死亡事故なのです。熱中症警戒アラートが出てからでは遅い場合もあり、このような対応では今後も死亡事故は繰り返される恐れがあります。

WBGTが部活では軽視されている

WBGTは熱中症予防のための指標です。28以上で『厳重警戒(激しい運動は中止)』とされており、運動は危険です。暑さ指数(WBGT)の実況と予測に過去の米沢市のWBGTデータがあります。当時の米沢市のWBGTは、28〜30であり、運動は中止レベルでした。当時、熱中症の『危険レベル(運動は原則中止)』には至っていなかったものの、『厳重警戒』レベルであったことが分かります。この段階で本来部活は中止にすべきだったのです。

7月28日山形県米沢市でのWBGT指数

しかし、WBGTが28を超えることは今の日本では珍しくはありません。そのため、基準を律儀に守ると、7月〜8月は部活ができなくなります。だから、指標を軽視してWBGT28以上でも部活は通常通り行われるのが一般的です。当時の米沢市の中学校でも、WBGTが31を超えないために平常通り部活が行われ、中止にはならなかったのでしょう。これでは、死亡事故は再び繰り返されてしまいます。

原則は部活に対して実行力のある規制にならない

部活に関して様々なガイドラインやルール作りが進められてきました。しかし、どの規則にも『原則〜する』という例外を認めてしまう柔軟性があります。命を守るルール作りにおいて『原則』をつけて例外を認めてしまうことに対する疑問があります。

『原則』に対して様々な理由をつけることで、そのルールが守られないことが多いのは周知の事実です。例えば、『大会前なら考査前でも練習』が認められてしまっています。『原則休養日を週2日』とされても、シーズン中では休養日が設定されずに部活の練習が行われたりもします。今回の状況のように『運動は原則中止の暑さ』であっても、『原則』の規定のために大会前なら部活の練習は行わざるを得ないでしょう。命の安全よりも部活が優先されてしまうのです。

まとめ

命に関わる暑さの中、部活からの帰宅途中にて子どもが死亡する事故が起きてしまいました。部活は暑くてもやるものだという認識が一般的であり、熱中症予防指数が高まっても軽視されていたり、部活の中止がしにくかったりという現状があります。しかし、暑さを軽んじていると、今回のように命が失われてしまいます。

夏の期間の部活動について、今のままでいいのでしょうか。暑さを理由とする大幅な規制の実施や大会の廃止など、子どもの命を守るために大人ができることがあるはずです。なにか手を打たないと、再び命が奪われてしまうでしょう。

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