スウェーデンの高い投票率:忘れられた「組合大国」という側面

この数字は、何でしょう?

アイルランド:75.3%  スウェーデン:68.8%  ベルギー:51.9% イギリス:27.1% ドイツ:19.1% 日本:18.2% アメリカ:11.9%

投票率?? いや、イギリス以下低すぎでしょ。


答えは、労働組合の組織率です。スウェーデンはOECD諸国第2位の組織率を誇ります。北欧諸国は全般的に組織率が高いです。


 スウェーデンは、日本と真逆な国です。

日本では、国が決めた最低賃金以上の金額で各社の経営者が賃金の額を決めます。スウェーデンでは長らく、労働組合と経営者団体(日本でいう経団連)の上位組織の全国レベルの交渉でおおよその賃金や労働時間・休日休暇が決められてきました。

日本では長らく、保守政党で農業組織や各種業界団体と結びつきの強い自由民主党が政権を担ってきたのに対し、スウェデンでは社会民主主義政党の社会民主労働党が政権を担ってきました。社会民主労働党は労働組合と強く結びつき、種々の社会福祉政策を実現させていきました。

そのことから言えるポイントが二つあります。

日本では雇用社会化が進むに伴い、賃金がいくらもらえるか何日休むことができるかという問題が個人的な問題になっていったのに対し、スウェーデンでは全国的な共通な関心事のままで今日を迎えています。個人的な問題に格下げしていくことを「脱政治化」、共同体の全体の関心事に格上げされることを「政治化」と言いいますが、政治化度合いの違いが第1のポイントではないでしょうか。

日本同様、今日のスウェーデンも複数のナショナルセンターがあります。政党との距離もまちまちですが、ブルーカラー労働者を組織しているLOが社会民主労働党と強力な関係を持っていることも欠かすことができないポイントです。なぜかというと、学歴・所得が低い層の政治参加は低調になるのは世界共通の現象だからです。他国では政治参加が難しい層が労働運動を通して政治運動に関与しているから保たれている投票率なのではないでしょうか。


特定の党が優位の政治体制、各種団体と政党の強固な連携というのは、南米のポピュリズム政権やチトー時代の旧ユーゴスラヴィア、極端な例をあげれば、イタリア・スペイン・ポルトガルのかつてのファシズム政権の特徴でもあります。(多様性を尊重する文化がこれらの政治体制とスウェーデンの決定的な違いですが)

若い世代の投票率の低下に大きな関心のある日本ではスウェーデンが注目されているようですが、労働組合のような古臭い利益集団から解放された個人による自由な判断に基づく政治参加を理想化する日本の人々から見て、国家的カルテルのようなスウェーデンがお手本になるかは、かなり疑問です。

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