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デリーに癒しはあるのか

<世界一周6ヶ月目あたり・デリー>

1日1700万人、期間中のべ数十万人が訪れる、12年に一度のヒンドゥーの祭典「クンブ・メーラ」。これを見るためにハリドワールまで来て数日……。
(祭りの様子は勇輝が書いたこちらこちらの投稿をご覧ください。)

ご察しの通り、不覚にも、かなり弱っております美和です。
今なら、スライムでも快心の一撃が出れば倒せるでしょう。

ブッタガヤで1ヶ月のプロジェクトをやりきり、疲れが想像以上にたまっていたのでしょうか。
なのにハリドワールで人の波にもみくちゃになり目がばってんになり、暑さと臭さと全裸の男たちと完全ベジの食事…… とにかく沸点だか凝固点だか何かの限界値を越えてしまったようです。

このような人間の選択肢は3つ。
①即帰国
②思考停止 
③薬物方面 

無論、私がやむをえず取ったのは②でした。
(↓ ただいま「無」中です。脳内になにもありません ↓) 

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デリーへ出発せんとする列車の中。
のん気な勇輝はインド人のおっさんと仲良く爆睡。

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かたや「無」を貫く私。
窓からの眺めも、もはや森山大道風にしか目に映りません。

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5時間後。
もうすぐデリー、という夜10時頃の列車内。

見かねた勇輝が私を励まそうとします。
向かいにインド人夫婦が寝てるのでヒソヒソ声。
「ねえもしかしたらデリーって、バキバキかもしれないよ」
「バキバキってピカピカってこと?」
「そう。だって首都なんだよ。駐在者もいっぱいいるんだよ」
「あ、そっかーーーーー!!!!」

単純な私(たち。※勇輝も相当アガっている)。
早速ロンプラ(ロンリープラネットです)を読み直します。

外国人旅行者が多く、安宿と各国料理のレストランがある賑やかなパハルガンジエリア。
一番の中心で最先端のショップが並ぶホットなエリア・コンノートプレイス。
名だたる一流ホテル、高級レストラン、日本食レストラン・・・。

ああ、私、助かるかもしれない・・・
インド嫌いにならずに済むかもしれない・・・・
宿は、絶対AC(エアコンのことをこう言う)つきにしよう。ね、ね。
デリー滞在のテーマは「癒し」にしよう。
そうだそうだ!
いいぞ。

到着。

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ん?

デリーだよね?ハリドワールではなく。
電車一周しちゃってないよね?

ま、いいや駅だもん。
そんな、
私の視界に飛び込んできたもの!!!!
なんと駅の中に!
希望の光!ゴールデンアーチ!!!

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(※資料写真。渋谷宮益坂店)

キターーー!助かったーーー!!!!

・・・約20分後。
あえてその感情に名前をつけるとしたら
絶望、だと思います。
夜12時だとは言え、天下のマックでしょ?首都デリーでしょ?
なぜ入れたコーラを放置?そのポテトいつからそこにあった?なぜポテトをもう一度そこに戻してかきまぜる?なぜそこで次の接客に入る?なぜ1人しか働かず3人遊んでいる?なぜに?なぜに?

いや、ほかのことはいいや。
とくに、私のマックポテトへの並々ならぬ思い入れがいけないのでしょう。
愛しすぎるから、傷つくのです。
ブッタガヤのアジャイさんの言葉が響きます。
「期待しない。期待するからおかしくなる」
わかってる。わかってるよぅ。

変な茶色で、硬く、まずかったポテト。
日本のように言えば取り替えてくれる、わけもなかった。
深夜デリーのマックで不覚にも涙がこぼれそうな女が一人。
無垢な勇輝に動揺を与えまいと(いや、こんなくだらない理由が恥ずかしく)必死で堪えた。(が時すでに遅し。ばれた)

わなわなしながら駅を出てオートリクシャに乗る。
絶望その2。
勝手に(本当に勝手だ)妄想したバキバキデリーは、そこにはなかった。

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すごい埃に、布で鼻と口を押さえながら心の中で叫びます。
「だーーーよーーーねーーーーーー」
(懐かしのヒットナンバー「DA.YO.NE」より)

ここからは、私の味わった数々の絶望と、
「癒し」を求めデリー中を彷徨った軌跡を
ダイジェストでお届けします。
本当にくだらないです。
バラナシでのせっかくのボリューム調整も台無しです。ただいま「自分が自分が」大音量ウーハーつきです。

※分かりやすいように、新しい単位で表記しましょう。
癒しを表す単位として、実家でごろごろしオナラでもしながら母のご飯を待っているひとときを「1ジッカ」、
絶望を表す単位として、カルボナーラにコショウを慎重に入れてたら蓋が取れて全部入った瞬間を「1カルボ」とします。
ちなみにデリー駅ポテトは3・5カルボでした。


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奮発して1泊950ルピー、約2000円も払って入った宿。
埃っぽいACと微弱なワイファイつき。
0・3ジッカ。
デリーに詳しいカズマにタスケテメールを書く。すぐ返事が。
「デリーで癒し?無謀だな」
・・・・。


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旅行者の都、賑やかなパハルガンジエリアと書いてあった実際の風景。
2カルボ。


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エアコンの効いた近代的メトロ。0・05ジッカ。


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尚も続けた宿探し。↑ロンプラでなかなか評価だった宿。すっごく歩いて見つけたのに。
すえた臭いと廊下にガネーシャ。
ありえない。5カルボ。


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大奮発し、幾多の受賞暦を誇る高級レストラン「スワガット」へ。
キンキンのビール!料理もうまし!さすがにウキウキ奥様。
しかし30分後、冷房が寒すぎてヒサンな状況に。
翌日ふたりとも風邪をひく。

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すげーがっかり。(※単位やっぱ分かりにくいのでやめます)


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ポリスなのにこんな雑。


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最先端のショップが並ぶ一番のホットな中心・・・。
まさかのコンノートプレイス。
絶句。



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行きたくないとリキシャ運転手に断わられ、
大きな立体交差を歩いて渡る。(歩いてるのは私たちだけ)
空気が悪すぎて真っ白な夕日。勇輝声やられる。
(1Q84に来ちゃったかと真剣にドキドキした)


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ちょっといいムードのルーフトップレストランへ。こっそり無免許でビールも出るんだって。
が、出てきたのはBYポット&ティーカップ…!!!
ずずーとビールをすする。ぬるい。
NO!無理!堪忍ならん!
クリケット中継に夢中でまったく動かない店員たち。
うきーーーーーーーーーーー!!!!!

ピピーーーーーーーー!
宿、チェーーーーーンジ!

1泊2200ルピー(約4500円。これまで身につけたあらゆる技と演技力を駆使し約半額に値切った値段)。
パハルガンジエリア最高級、「ル・ロワ」である。
どこにもフランスの香りはしないが、近代的!きゃー!

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無料のネットがサクサクでゴキゲンな旦那様。

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きれいなシーツが嬉しくて、繕い物なんかしちゃうルンルン奥様。

きれい!快適!しかも朝食つきなのよ!
(コンテンポラリーブレックファーストの卵焼きがマサラ味で笑ったが)

そういうわけで、ジッカまではいきませんが、
まあ、癒されました。命だけは助かりました。
なにがあってもここから出ません。
人間、無理は禁物です。心の平和が大切です。

なんか話がぐっだぐだになっちゃったけど、
総論としては、「デリーに癒しはあるのか?」の問いの答えは
「まあ、ない。」
だと思いました。

最後に、友人カズマが教えてくれたスポットの中で、彼一番のお気に入りだという、オールドデリーのモスク、「ジャマー・マスジド」に行ったときの思い出でお別れします。

荘厳で美しい建築。

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そこで待っていた屈辱。

入り口でおっさんに「これを着ろ」と。
なんで?くるぶしまでのアリババズボンだし、ちゃんと半そでシャツだし!
「女性はシャツがひざまでないとダメだ」
なにそれ!民族衣装限定じゃん!そうじゃない人だっているじゃん!
(・・・・・・いない。)
じゃあロンギをすっぽり体に巻くから!
「ダメだ」
ヤダヤダーーーー!
勝手に着せられる。ダボダボのナイロンの合羽みたいなもの。
着たほうがむしろ神様に失礼じゃないの?という。
埃っぽいし何この柄ー!もう33歳なのー!
ジタバタ抵抗してるうちに完成した、
THE・屈辱ルック。

こんなとき人間の反応は3つ。

①「・・・。」となる

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②心が邪悪&オラオラになる

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「あに見てんだよ」「クスクス笑ってんじゃねーよ」
「着せられたの!自分のじゃないの!」


③やけっぱちになる

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「へいへーい!やっほー!ヒューヒュー!」

この屈辱を分かち合おうと
外国人女性を探したが、こんな時に限って・・
1人もいなかった。
勇輝はずっとゲラゲラ笑っていた。

さてはカズマの仕掛けた罠だったか。
この屈辱、忘れまじ・・・。


おしまい

(MIWA)

2010年4月

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