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画詩#23 暗闇から出てきた僕

「明るいな」
暗闇から出てきた僕は ふと そう思う
すべてが輝いて見える
大地も海も空も ただただ 美しく見える

小さい頃から暗闇にいた僕には 暗いことが当たり前だった
いつの間にか 暗闇に目が慣れ 明るく美しいものは遠ざけた
生きるとはそういうことだと 言い聞かせながら大人になった

そしてある時 さらに暗闇が深くなり始め そんな自分すら飲み込もうとした時
僕はそこから逃げ出した
ただただ 怖くて逃げ出した

あてもなく 暗闇の中を とぼとぼ歩いた
なんとなく気持ちが明るくなる方向に
あくまで疲れない自分の歩幅で
深い暗闇を思い出して 泣きながら
「もう、そこには戻らない」と 呟きながら

気づくと いつの間にか 周りは薄っすら明るくなっていた
明るくなると 色々なものが見えてきた
濡れた手袋 歪んだ眼鏡 サイズの合わない靴...
いままで当たり前だと思っていた そんなもの達を
ひとつひとつ 捨てたり 自分に合うものに取り替えていった
「今までありがとう」と ひとつひとつ お礼を言いながら

そうやって 長い時間をかけて やっと暗闇から出てきた僕は
いま 明るさの中で 踊っている
深い暗闇を思い出しても 笑いながら踊っている
青空の上で 輝きながら踊っている

すべてが輝いて見える
大地も海も空も ただただ 美しく見える

2020年8月27日

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