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ケース検討会の大切さ

「おせっかいワーカーになろう⑨」

 見守り訪問員の強みは、スタッフにいろいろな資格と経験をもった人がいることです。教師、看護師、保育士、幼稚園教諭、社会福祉士、精神保健福祉士、臨床心理士として勤務した経験ばかりでなく、主婦やPTA、民生児童委員、自治会、マンションの管理組合、母親支援、ボランティア等の多様な活動の経験もものを言ってくるのです。年齢も二〇代から七〇代まで幅広いですから、子どもや若い母親、父親、共働き、主婦、祖父母等など、様々な立場の考え方や感覚まで共有することが可能なのです。

 特に訪問を開始した当初は、資格というよりも、日常的に家庭訪問や若い保護者と接する機会があるスタッフがリードしてくれました。そして不安を抱えながら訪問した経験をたくさん語り合うケース検討会が、とても役に立ちました。訪問先では、どんな人が出てくるか分かりません。柔らかく出た方がよい時も毅然とした態度を取った方がよい時もあります。あの対応でよかったのか、もっとよい言葉かけはなかったか、と反省ばかり思い浮かびます。扉の中に入ったので図々しくなかったか、扉を開けたまましゃべったので近所に知られることを恐れていたのではないか、と尽きません。

 例えば、保護者の怒りに接したとして、その背景にあったのは、経済的なもの、トラウマ、障がい、八つ当たり、性格等いろいろな可能性が考えられます。様々な角度から意見を出し合って検討するのです。そうすると、そんな理由で怒ることもあるんだと、保護者への理解が深まり、許容範囲も広がります。また踏んではいけない虎の尾や飛んでくる矢をよけるアイディアを考えたりもできます。

 情報を出し合っていると、自分が日頃いかに狭い範囲で生活して、知らないことがたくさんあるかを痛感します。若い主婦からはネットやスマホ利用の最新事情、金銭感覚、保育士からは子どもの遊びや食生活、精神保健福祉士はウツや双極性障がいの見方、看護師は乳幼児の検診や予防接種、病気や投薬、教師は学習の進度や不登校、学校の状況、社会福祉士は生活保護や介護保険、という具合に子どもや家庭を取り巻く様々な事情やものの見方等が少しずつ身体に染みこんでいきます。スタッフみんなの経験や専門知識が一人一人の力になって、それが訪問の時に多角的なとらえ方や柔軟な対応につながっていくのです。

         【労協新聞2017年 「おせっかいワーカーになろう⑨」】

応援よろしくお願い致します。