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その場所に咲いた花

東野たま
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小さな種は
土の中で
ゆっくりと眠り

時がくれば
静かに
世界と出逢う

それが
どこであろうと

風にまかせて 降り立った地で
気の向くままに 咲いて散る

夢のように短い生涯

親も知らず 友も頼まず
与えられたその場所で

ある時は
虫たちを誘い 
甘い蜜を分け与え

ある時は
わたしに真実を
知らせてくれた

何ひとつ奪うことなく
穏やかに時間を見送る

そんな花たちに

人間は
還せるものが何もない

小さな蜜蜂ですら
受粉の手助けをするというのに
その対価さえも奪い去る

わたしたちは誰ですか
愛とはいったい何ですか

せっせと花に名前をつけては
「花言葉」までこしらえて

わたしにできることと言えば

せめて
あなたのように
慎ましく生きること

それくらいしか
思い浮かびません

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