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或る夏の記憶

透明な風に吹かれ
少年はひとり丘の上に立っていた

たったひとつのものしか持たない 
孤独の飼育係
そのひとつさえ油断したらすぐに
風に連れ去られてしまう


空っぽになれない心を宿す
不均衡でちぐはぐな身体

持て余すほどの熱量だけが彼の意識に充満し
何事かを証明しようと浅い眠りの邪魔をする

真夜中と朝の間に広がる
確かな空の色さえ否定した日々
縁取りの無い少年の青春を 
妖しい色彩が明け暮れる


汗は早くも焼けた皮膚に別れを告げ
彼は冷たい夏の門をゆっくりと潜り抜ける

その時も今も 風が吹いていた
その時も今も 彼は実にひとりだった


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