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映画『敦煌』のラストーーまたは文化・芸術を戦争からいかに守るか

先日、知り合いの台湾在住のポーランド人研究者が東京に出張してきたので、お食事に案内して色々お話ししていたのですが、その方が2010年代に中国の敦煌で文化遺産関係のお仕事をしていた…という話を伺ったことで、しばらく頭の中が敦煌一色となり、さらにそこから連想して、ウクライナの現状を憂いています。

ポーランド人の研究仲間から久しぶりに「敦煌」という地名を聞き、私が高校時代に夢中になった映画『敦煌』を思い出してしまい、
自宅に戻って超・映画通の知人にひとしきり私の『敦煌』愛を聞いていただき、
さらにそれでも飽き足らなくなって、さきほどアマプラで映画を見直してしまったのでした。

映画『敦煌』(1988年)、私と同年代以上の方であればご覧になったことおありのかたもいらっしゃるかもしれません。
私にとってはいまだに、5本の指に入る好きな邦画(中国の歴史物ですが…)です。

(以下の映画.comの記事はネタバレを含みますので注意。
…というか私のこの記事も結構なネタバレが含まれているのですが…)

原作はこちら。小説もとてもよいのです。井上靖さんは中学時代に夢中になった作家さんでした。

今回10年以上ぶりに映画を観たところ、ラストシーンがあまりに今のウクライナと重なり、釘付けになってしまいました。

攻撃を受けて敦煌が火に包まれる中、佐藤浩市扮する趙行徳と仲間達は、敦煌に集められた貴重な仏典や美術品、書籍、その他重要資料を、文字通り命がけで隠し場所へと運びます。

親友の呂志敏(柄本明)が息を引き取る際に絞り出した「灰にしてはならぬ」という言葉が、行徳を奮い立たせるのです。

厳しい戦闘の最中、文化財を運搬するためのラクダ20頭を買うお金をぽんと出してくれた朱王礼(西田敏行)の優しさや、そのラクダに積まれた膨大な荷物を金目のものと勘違いした尉遅光(原田大二郎)の打算などが入り交じり、燃えさかる敦煌から次々と貴重な文化財が運び出されます。

その後、安全な場所に文化財を保管した行徳の仲間達には過酷な運命が待っているのですが、命をかけて文化財を守ろうとした人々の情熱にウクライナの現状を思い出さずにはいられず、涙が止まらなくなりました。

私が改めてご紹介するまでもありませんが、2年にわたるロシアへのウクライナ侵略は、ウクライナの文化を回復不能なレベルで破壊しています。

このままではウクライナが大事にしてきた文化が完全に破壊されてしまう。
ウクライナの方々も、そうした焦燥感は身をもって感じていることでしょう。しかし、ロシアからの侵略が収まる気配がなく、ウクライナ側の死者数負傷者数も増えていく中で、文化保全までにはとても手が回らないことも事実でしょう。

ウクライナに対する支援は様々なものがありえますし、まだ知恵を絞る余地があります。
ロシアからの侵略が長引く中で、ウクライナの書籍、印刷物、美術品等をどのように守るのか、それをどのように支援できるのかにも、私たちは心を砕いていかなければならないと思います。
ちなみに以下の記事は、米国によるウクライナの教科書の印刷支援です。

またこれは、ウクライナの映像の復元に関する日本の支援に関する報道です。

私自身も、メディアでの発信の機会を得られたときには、軍事面や政治が後面だけに特化してお話しするのではなく、こうした文化の保護面についても折に触れてお話ししていければと思っています。



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