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「明日は捲る2024」感想


『クズ』
って、なんだろう。

借金してまでギャンブルする人?
恋人の金でギャンブルする人?
養育費を払わずにギャンブルする人?
他者の腹を殴る人?
男を金としか見ていない人?
仕事を真面目にしない人?
迎合することしかしない人?
愛を信じられない人?
私情で従業員を雇う人?
自己の利益のためにスパイ行為をする人?

倫理、規則、人情……

どれが『それ』としてこの物語で描かれたものなんだろうか、
あるいはここに正解はないのか。


そんなことを考えていた折
ふと、白井さんの言動にキーになっているものがあるんじゃないかと思った。

(以下、登場人物の敬称は省略します)

(相変わらず「舞台の感想」というよりは「舞台に触れて思い浮かんだこと」って感じの内容です)

借金取りの親分、白井英志。
物語中で大きな鍵となる「見」についても、この人物の口から出た言葉だ。

「見(読み:ケン)」
意味…予想をしたうえで「賭けない」という判断をすること

ギャンブルにのめり込んでいる人ほど選択するのが難しい、この「見」の判断を、洋平は土壇場で選択することができた。

(ちなみに私は、某バーロー名探偵の映画のワンシーンを思い出した)
(青を切っちゃうところだった)


白井の行動の中で私が気になっていたのは、
債務者に対して同情して、お金をあげてしまうことだ。

最初お金を渡すシーンを見たとき、
「借金額を上乗せするのか〜
こういうのって利息やべえんだろうな〜」
とか思ってたんだけど、

子供に会えなくなった茅原に同情した際に渡したお金を
茅原がギャンブルに使い込んだことを知ったときに
『人の好意を踏みにじりやがって!』
と憤っていて、

「え?!あれ貸したんじゃないの?
贈与なのプレゼントなの??」
ってびっくりした(笑)
そりゃ子分の今村もつっこむでしょうよ←


数日間 食事を取れていない洋平に
(ギャンブルに費やすからなんだけど)
自分の子供に会えない茅原に
(元はといえばギャンブルに費やすからなんだけど)
白井が贈ったのは白井の“気持ち”だった。


お金のことを「お心遣い」って表すこともあるし、
「金を無心する」という言葉も存在する。
金は心、心は金、なのかもしれない。

例:
お金を頂いたときに
「お心遣い感謝いたします。」と御礼を伝える表現がある

「無心する」
意味…遠慮なく金銭や物品をせびること

これらのことをふまえて、
クズとは『他者の心を蔑ろにする人』
なのではないかと考えた。

自己の利益・快楽のみを優先して、
他者の気持ちを蔑ろにする。

それがいろいろな行動に顕現して、
『クズ』と呼ばれる所以になるのかな と。

(ふと、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を思い出した)


変わりたいと強く望み、
「他人を思いやる行動」を起こした洋平は
『クズ “だった”』と過去形になった。

しかし「どうせ元の木阿弥」と、
白井が話す内容は不穏だ。

劇中でも、洋平のセリフには危ういところが多い。
(と言いつつセリフうろ覚えだからニュアンスで…)

「子供なんかいらねーだろ!」

早苗にとっては
本当に大切で尊くて、
2人を繋いでくれるかもしれない希望で、
失いたくないものだった。

「そんな理由で(自殺するの)?」

馬場社長にとっては
この世から消えてしまいたいぐらい辛いことだった。


人間、他人の気持ちなんて完全に分かることはないし、たぶん誰も傷つけずに生きることは無理なんだろうなって思う。

だけど、
「他者の気持ちを思いやる」気持ちを忘れないように
あるいは
蔑ろにしてしまったときに気づくことができるように
もしくは
本音を伝え合えるような関係性をお互い築けているように


そんなふうに生きて、捲っていってくれーと思いました。

大山早苗役・岩立沙穂さんのサイン入りトート


早苗も怒鳴れるようになってたし(笑)

気持ちを黙って飲み込んで、
1人きりで傷つくことが
どうかありませんように。

劇中はしかめっ面が多い早苗さん

できるかぎり傷つけることがないよう、気をつけたいなー。“心” を砕いて。

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