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『君と明日の約束を』 連載小説 第二話
檜垣涼(ひがきりょう)です。
1投稿数分で読める連載小説の投稿をしています!
第一話はこちらから↓
時期的に結構怖いけど……まあ、腐ったら分かるだろう。彼女の優しさに免じて話の腰を折るのはやめておくことにした。
「ひおりん? 行かないのー?」
その時教卓のあたりから女子生徒の声が飛んできた。
声の主は彼女の友達らしい。彼女がそれに応える。
「行くよー! もう行くの?」
「そろそろ出ようかなって。行く前に買い物したいし!」
「わかったー」
友達との会話を終えクルッと振り向いた彼女と目が合う。
「小坂くんは? 行かないの、打ち上げ」
正直なところ、あまり乗り気ではなかった。
「行けたら、かな」
「それ来ないやつだ」
そう彼女は笑う。責められないことでむしろ罪悪感が心の奥に滲み、素直に謝る。
「ごめん」
「なんで謝るのよ。自由でしょ。じゃあ、楽しんでくる」
彼女がクラスの一体感を強制しない性格だということに少し感心した僕は、軽く手を上げて彼女を見送った。
彼女たちが教室から出て行き、少しだけ部屋の中の喧騒が収まった後、持って帰る食材を選んでいると「珍しいな」という声が頭の上から落ちてくる。
声の方を見上げると、出会った時から一度も見下ろすことを許してくれなかった幼馴染、慎一がいた。彼は表情にからかいの空気を滲ませている。
「なにが」
「ミツが日織と話しているの」
ミツは僕のあだ名だ。幼馴染のその言葉から、倉本さんの名前を知る。だから「ひおりん」か。
「なに話してたの」
「なんでもいいだろ」
物珍しそうに訊いてくる感じが気に食わないのでわざと口を濁す。
「なにそれ。じゃあ、当てる」
わざとらしく悩むふりをした彼が自信満々に指差したのは、僕の目の前にある段ボール。
ため息をつく。全部聞いてたのか。
「余ったから何か持って帰ろうと思って」
「お、さすがミツ。でも俺は今日荷物多いから無理だ。明日でいいや」
「そっか、塾か。慎一は打ち上げ行くの?」
「いや、行かない。行ってもすぐに抜けないといけないし」
慎一は即答する。
「だったら早めに塾行って宿題終わらせとく」
「そっか」
頷いた慎一は自分のロッカーに行き、中の教材を入れ替えている。
「あ、これいる?」
彼がそう言いながら投げてきたものを両手でキャッチする。
〜〜第三話に続く〜〜
【2019年作】恋愛小説、青春小説
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