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【必見】皮膚科医が「ニキビ跡のシミ(炎症後色素沈着)」の治療方法と費用をまとめてみた

 ニキビ跡(痕)のシミや赤みに悩んでいる方は多いと思います。ニキビ跡ができてしまうと、3人中2人は1年以上シミが消えません。これだけ長引くと、どうしても気になってしまいますよね。

 では、ニキビ跡のシミ/赤みの治療としては、何が推奨されるのでしょうか?米国皮膚科学会の雑誌に掲載された論文[J Am Acad Dermatol. 2017;77:607-21.]をもとに解説していきますね。

 この論文では、ニキビ関連のシミ(炎症後色素沈着)について、3種類の治療を推奨しています。

【推奨度A】
① レチノイドを1日1回、12-18週間塗る。

【推奨度B】
② 15-20%のアゼライン酸を1日2回で16-24週間塗る。
③ 4%ハイドロキノン塗布と20-30%サリチル酸ピーリングを併用する。

 推奨度Aが「効果がはっきりしているので非常に強く勧める」、推奨度Bが「効果が有望なので勧める。」という意味です。まず、推奨度Aの治療から解説していきますね。

① レチノイドを1日1回、12-18週間塗る。
 まず、「レチノイド」とは、「ビタミンAの誘導体や関連物質」のことを指します。レチノイドは、「シミのもとになるメラニンの産生を抑える」、「表皮が入れ替わる速度を促進する」などの作用により、ニキビができにくくするのと共に、ニキビ跡を薄くすることができます。

 日本で手に入れやすいレチノイドは、まず「ディフェリン」と「エピデュオ」が有ります。これらは共に「アダパレン」という成分が0.1%含まれており、病院で保険適応で処方してもらうことができます。「アダパレン0.1%でニキビ後のシミが薄くなった」との報告が有り、効果を期待できます[Cutis. 2001;68:48-54.]。

 (厳密には「ニキビ跡」への処方はできない点にはご注意下さい。あくまで「ニキビ治療」の薬です。ニキビ治療を行うことで、ニキビ跡治療の効果もついでに期待できるということになります。ニキビはない方の場合は、後述するトレチノインなどを自費で購入する必要があります。)

 値段的には、3割負担の方なら、

・ディフェリンゲル(15g) 400円程度
・アダパレンゲル(15g) 170円程度 ※ディフェリンのジェネリック
・エピデュオゲル(15g) 660円程度

 です。コスパを考えると、ジェネリックである「アダパレンゲル」が良いです。ただ、「エピデュオゲル」は過酸化ベンゾイルという成分が足されており、ニキビ予防効果が上がっています[J Dermatolog Treat. 2011;22:197-205.]。個人的には、月500円程度の差であれば、エピデュオの方が良いとは思います。まずはエピデュオを3-4ヶ月試すのが基本の戦略となります。

 ただ、エピデュオは副作用として乾燥やヒリヒリ感が出やすいです。「ヒルドイドローションなど保湿剤を併用する」、「最初の1ヶ月は2日に1回のペースでゆっくり慣らす」といった工夫が必要になるでしょう[Eur J Dermatol. 2018;28:502-8.]。さらに、そもそも2-3%程度の方はどうしても体質に合わないので[日皮会誌. 2017;127:23-30.]、そういう方はアダパレンゲルの方を選ぶことになります。

 さらに、エピデュオ以上に強い効果を求める場合には、保険外での治療薬を検討することになります。日本で手に入れやすい保険外のレチノイドとしては、「トレチノイン」があります。「アダパレン0.1%」よりも「トレチノイン0.05%」の方が強いという報告があります[J Dermatolog Treat. 2004;15:200-7.]。副作用の乾燥やヒリヒリ感も出やすくなるので注意が必要ですが、「トレチノイン0.05%」や「トレチノイン0.1%」を試すのは一つの方法でしょう。なお、0.1%よりも強いトレチノインはデータが不十分なので避けるほうが無難です[Cochrane Database Syst Rev. 2015; 2015: CD001782.

 問題は、値段が高いこと。美容皮膚科での取扱価格は、このような金額です

・トレチノイン0.05%(10g) 6000円
・トレチノイン0.1%(10g) 8000円

 実際には特に高級な成分ではないのですが、残念ですが日本の美容皮膚科医は利益を重視する方が多いですからね・・。安く使用する場合は、オオサカ堂というサイトなどを通じて個人輸入する形になると思います(ただ、もしも副作用が出た場合には自己責任になってしまう点はご注意下さい)。例えば、オオサカ堂で「エーレットジェル」という商品を検索すれば、

・トレチノイン0.05%(20g) 1666円
・トレチノイン0.1%(20g) 1721円

で購入できます。1gあたりの値段で考えると9倍以上の差です。

 また、エピデュオを強化した「エピデュオフォルテ」という商品もオオサカ堂で検索すれば個人輸入が可能です。この商品はアダパレンが0.3%配合されており、エピデュオの3倍に相当します。ニキビ跡を薄くする効果も、エピデュオより強いと考えられています[Am J Clin Dermatol. 2018;19:275-86.]。

・エピデュオフォルテ(30g) 4325円

 ちなみに、アダパレン0.3%はトレチノイン0.05%と同じくらいの強さとされます[Eur J Dermatol. 2018;28:343-50. ]。そう考えると先程のトレチノインよりも割高に見えるのですが、アダパレンはトレチノインよりは副作用が少なく使いやすいですし、過酸化ベンゾイルが配合されているのでニキビ予防効果が高いです。顔全体に使うのであれば、こちらの方が無難かと思います。

 以上をまとめると、大まかな目安としては、

・ニキビが有るなら、基本的には病院でエピデュオを処方してもらい、ニキビ治療の一環として3,4ヶ月継続する。
・合わない人はアダパレンゲルを使用する。
・より効果を求めるならば、コスパ重視ならトレチノインを部分的に使う。
・あるいは全体に使用したいのであれば、エピデュオフォルテも検討する。

という感じです(勿論例外はありますし、特に処方薬についてはかかりつけ医とご相談下さい)。では、次の作戦の説明に移ります。

② 15-20%のアゼライン酸を1日2回で16-24週間塗る。
 「レチノイドは痛くて使えないよ!」という方もまれに居ます。また、妊婦さんはレチノイドを使用できません。実は妊娠中はホルモンバランスの関係でニキビができやすいですし[J Am Board Fam Med. 2016;29:254-62.]、そういう方も使える治療法が必要です。

 そういった方に次善の策として使いやすいのが、「アゼライン酸」です。レチノイドと効果は似ているのですが、少しマイルドな感じで副作用が出にくいですし、妊婦さんでも使えます。このアゼライン酸をニキビ跡のシミに使用する場合は、15-20%の濃度を1日2回、4-6ヶ月塗ることになります。

 具体的な商品としては、国産のものですと、

・ディーアールエックス® AZAクリア®(15g) 2000円

美容クリニックなどで購入できます。そこまで高い値段ではないですね。ただ、オオサカ堂で「スキノレンクリーム」と検索すれば、

・アゼライン酸20%(30g) 2474円

と半分近い値段で買うことも可能です(これも副作用が出たら自己責任になってしまうので要注意ですが)。なお、アゼライン酸はレチノイドと働きが似ているので、両方を併用するのは避けたほうが良いでしょう。

 では、最後の作戦の説明に移ります。

③ 4%ハイドロキノン塗布と20-30%サリチル酸ピーリングを併用する。
 この方法は、レチノイドもしくはアゼライン酸と併用することが可能です。実際、「レチノイド外用とサリチル酸ピーリングを併用したら、レチノイド単独使用よりもニキビ跡が薄くなった」という報告もあります[J Cosmet Dermatol. 2017;16:52-60.]。費用面や副作用の問題がなければ、最初から併用しても良いでしょう。

 ただ、ハイドロキノンもサリチル酸ピーリングも保険適応外です。普通にハイドロキノン4%を美容皮膚科で購入すると、これまた高額で5g 2000円程度のところが多いです。代わりにAmazonで「ユークロマ」という商品を検索すると「40g 1859円」とはるかに安い値段で購入できるので、そちらも検討されます。

 問題になるのは、サリチル酸ピーリングです。美容皮膚科でやると、月に1回のペースで行うのですが、1回あたりで1万円程度かかります。これを6回位繰り返すことが多いので結構な出費です。ただ、「サリチル酸マクロゴール」を個人で入手するのは難しいので、この出費は仕方ないかなと思います。本気で早く治したい方はお財布と相談して検討してください。

 どうしても費用を削りたい場合には、「サリチル酸エタノール 20%」ならAmazonで購入可能です。30mlを5887円で購入できるので、そうとう安いです。しかし、サリチル酸エタノールは皮膚に付けすぎると「サリチル酸中毒」を起こすリスクがあります[日皮会誌. 2008;118:347-55.]。自宅では使いにくいです。どうしても使いたい場合には、自己責任のうえでニキビ跡に2,3分だけ付けたらすぐ拭き取り、その後にアイシングする必要があります。あまり積極的に推奨できる方法ではないかもしれません。

 以上、ニキビ跡のシミ(炎症後色素沈着)に対する治療法や費用をまとめました。なお、どの治療を行う際にも、「日焼け止め」を正しく使用することが大前提です。日焼け止めを選ぶ際は、

・SPF 30以上
・PA++以上
・防水
・ノンコメドジェニック

のものを使用してくださいね。(日焼け止めについても後日もう少し詳しくまとめます)

 皆様のお悩みが解決することを祈っております!

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