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ミシュラン三つ星レストランへの挑戦 vol.3

東京・白金のフレンチレストラン「ラ クレリエール」のオーナーシェフ、柴田が日々、何を考えているかを綴ります。

[フランス料理]  レストラン ラクレリエール柴田秀之
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[映像] ルブトンワン  佐々木優
2020年 10月26日~11月1日まで(29日木曜日は店休なので除きます)の6日間のディナータイムに、
これまでの柴田の料理人生や、料理哲学を映像で表現したmovie(30分ほど)を
ご覧になって頂いた後、クレリエールのお料理(12品ほど)を楽しむというディナーイベントです。
ご予約はHPからお願いいたします。

第一章 レストランのシェフになる

前回&前々回の記事はコチラから
 → 1.シェフになろうと思ったきっかけ
    2.家族の存在

3.いよいよ東京の調理師学校へ

授業は毎回特等席

僕が入った「エコール 辻󠄀 東京(辻調理師専門学校)」では当時、教室の座席は早い者勝ちでした。朝早く行けば一番前に座ることができたので、僕はほぼ毎回教室に一番乗りして、最前列の真ん中で授業を受けていました。そのため、始業は8:30でしたが、校門が開く7:00前には大抵学校に着いていましたね。教室はどの席からも講師の手元が見えるような設備になっていましたけど、何にも遮られず細かい部分まで自分の眼で見られる最前列真ん中は、僕にとっては特等席でした。

バイトとセットの学生生活

辻調には「住宅セット型アルバイト」という進学制度があって、在学中の1年間そこで働くことを条件にアルバイト先が住居を格安で提供してくれるシステムがありました。バイト先はいくつかある中から選べたのですが、僕は確かお給料の額で「八丁味処 串の坊」に決めました。卒業したらフランスに行こうと思っていたので、お金を貯めたかったのです。
寮は、6畳にベッド2つの2人部屋。賄いはなかったので食事は1階のキッチンで各自で作りました。僕の朝食は毎日同じで、ごはんとみそ汁と野菜炒め。休みの日に1週間分のご飯を炊いて1食分ずつ冷凍、野菜も切って“柴田”と書いたタッパーに入れて冷蔵庫にストックしておくんです。昼は学校でクロワッサンを食べ、夜はバイト先の賄い。ほぼ毎日同じ3食で1年過ごしました。

不思議な縁のクロワッサン

そうそう、毎昼食クロワッサンだったのは理由があるんです。実は、毎朝自分の席と一緒に友人用に隣の席も取っていたんです。僕は早起きしてるのに、彼は始業ギリギリに来て最前列。だったら昼食のパン代くらい奢れ(笑)ということで、学校近くのパン屋の5個50円のミニクロワッサンを毎日買ってきてもらっていました。
その友人というのが、いま「レストランモナリザ丸の内店」で支配人(兼シニアソムリエ)を務めている田中(大介氏)です。当時、店舗は違いますが彼も「串の坊」でバイトしていて、寮も一緒でした。まさかその後、同じ店の支配人とシェフとして一緒に働くことになるとは思いもよりませんでしたが。これも縁ですね。

寮→学校→バイト→寮の毎日

「串の坊」の寮は世田谷にあったので、学校がある国立までは40分~1時間くらいかかりました。朝起きて、朝ご飯を作って食べて、5時台に寮を出て6時過ぎの電車に乗る。学校が終わるとまっすぐ銀座の「串の坊」本店に向かい、バイトして賄いを食べて終電で帰宅すると、寮に着くのは夜中。それから勉強をして、寝る、という毎日でした。
どんなに疲れていても勉強は毎日必ずしていました。板書用と別に「まとめノート」を作っていたんです。今もとってありますが、我ながら出版できそうなクオリティですよ(笑)

1日4万円の幸せ者

毎日ハードでしたが辛くはなかったです。入学して1か月くらいかな。あることに気づいて、とにかく「出来ることは全力で全てやろう」と決心したので。
僕は入学時に全員購入する包丁セットは自分で買いましたが、入学金と学費は両親に出してもらっていました。ある日、ふと入学金+学費を授業日数で割って計算してみたら、なんと1日4万円!これは大変なことだと思いました。俺にその価値があるのか?!と。だって、プロの料理人でも1日4万円の給料をもらっている人はなかなかいないでしょう?
実家から米や野菜が送られてきた段ボールの裏に「1日4万円だぞ。しっかりやれ!」と書いて、それを机にして勉強しました。「4万円を最大限に使おう」と思ったら、朝誰よりも早く行くのも復習を欠かさないのも当たり前でした。
と言うと辛い学生生活みたいですが、僕自身は「(1日4万円もかけてもらえている)自分はけっこう幸せだぞ」と思って毎日過ごしていました。

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このnoteを初めて読んでくださった方へ
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はじめに初めまして。ラ クレリエールの柴田です。
白金でフレンチレストランのオーナーシェフをしています。
2020年のコロナ自粛の間、レストランのあり方や自分が今後進むべき道など色々と考えました。その中で「ミシュランで三つ星を獲得すること」を一つの指標として強く意識するようになりました。
そして、どのようにすれば三つ星を獲得できるのか、三つ星にふさわしいと皆様から認めていただけるのか、日々、考えたことや行動したことを記録に残そうと考えました。
ご興味を持っていただけたら幸いです。

お店の公式Facebook、youtubeチャンネルもご覧ください。

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