【MMPI研究4】ウォルシュのAの謎~R-PASからはじまって
心理検査で、MMPIやロールシャッハテストを使ってる人向けのノートです。
1,はじまり~ロールシャッハR-PASから
ロールシャッハR-PASには複雑性Complexityという重要でまさに”複雑な”変数が出てきます。複数の変数が複合してできています。ロールシャッハエクスナー法の、DEPIとかCDIとかもそう。R-PASだと、手計算不能(って実際にテキストに書いてある!)くらいに複雑。
複雑性という変数は、ロールシャッハテストスコア全体に影響してくるから特に重要です。「複雑性調整」なる手続きがあります。複雑性の数値の高い低いによって、調整後のスコアをみるかどうかを決めないといけないのです。
マニュアルにこんな一説が
ん?第一因子?
2,WelshのAは「第一因子」か
ほうほう、MMPI-2の第一因子が、ウォルシュのA、だと。どういうことだ?
A(不安)尺度はMMPIの追加尺度の代表作。古くから使用されていてどのテキストにもあります。でもまあその解釈は、そんな「第一因子」なんて輝かしい評価がされるようなものではなかったはず。
例えば
これだけ。
うーん。第一ってほどじゃなあ。
フリードマン(1989)の本の中にはR(抑圧)との組み合わせの評定はでています。高Aー高R,低Aー高R・・・みたいな組み合わせで評価する解釈文がでています。それってたしかになんでAとRのくみあわせでそんなのでてくるの?という幅広さはありました。例えば・・
なんか、不安+抑圧を超えた解釈文ですよね。だから、第一因子?わかんねえなあ・・・・
3、MMPI-2RFで進化していた!
しばらく、ほうっておいたけれど、こんな記述、みつけたんです。
MMPI-2RFで定める第一因子、士気喪失(demolarization)は、どうやらウォルシュのAを基にしていたようです。上記の記述だと、Aのどの要素をどんなふうに使ったの?参考にしたの?というのはわかりません。ただおそらくはAを土台に、士気喪失(demolarization)に進化していったんだろうということ。Aの基本概念とかその土台が、その後につながったんでしょうね。
そうだ確かに、こんな記述が
AやRは昔のMMPI全体に対して行う因子分析の研究の産物。MMPI全体にかかわる重要な”第一因子”・・・・・とまではAとRはいかなかったのかもしれませんが、その後の因子分析を使った研究が、Aを再発見したのかもしれません。少なくとも、現行日本で読めるテキストでのAの解釈文じゃ、”第一因子”な姿ではないですが。確かに、MMPI-2では、AとRはそのままいきのび、ちょっと特権的立場をもってたりしていました。
RC尺度はまた別なノートで改める予定ですが、RC尺度はMMPI-3の基本の尺度になっていきます。MMPI-3がこないと、士気喪失の使い勝手はわかりませんが、現在のMMPIユーザーは少なくともAに注目しておくことができます。来る時代の備えになります。
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