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[MMPI研究7]第4尺度、怒り・反社会性だけではなく

 このノートは、MMPIユーザー向けのものです。MMPI第4尺度について、掘り下げます。でも、すでに知ってる人は知ってる、と思います。ちょっと気になって調べるとそれなりにおもしろかったので、自分の学びをシェアします。

第4尺度、といえば 


 MMPIの第4尺度といえば、「怒り・反社会性」が高いというのが基本。おお、4が高いですなあ、なんかこの人はメラメラしたりイライラしたりしちゃうのかなあ?とみていくもの。

 別ノートにも示したんですけれど、第4尺度にはこんな視点もアリ?とおもったのが「家族の問題が関係する」とか、被験者の「”強み”になるかも」(こちら参照)です。

 このあたりが、テキストからはどのように言われているのかあらためてみてみました。

第4尺度を「強み」とみる

 テキストをみれば、T=70以下だったら、強みと見える記述はあるんですよね。

 大胆、危険を冒す、行動的、社交的、主張的 ~
 進取的な主導性、推進力、独立心

Freedman(1989)

でもこれはあくまで中等度の上昇ってこと。臨床レベルでは基準値以下、っていっていいわけで。T=70超えちゃうと、以上のような「強み」ってかんがえていいのか?ってなるとどうなんでしょうね。

 ただ青年期ってなるとちがうかもしれません。

青年はアイデンティティを強くしようとする反抗

Freedman(1989)

 なんてあります。確かに思春期青年期の反抗心は独立心の現れ、だったりするのだしね。青年の反抗する力は、強みとみていいのでしょう。
 そう、青年期思春期に上昇しやすい尺度だしね。
 そういや「いかれる若者」なんていったりしますね。(ああでも古い言葉じゃないかなあ。今はちがうのかなぁ。)

第4尺度と「家族の関係」

 どうやらここあそこに、尺度の上昇が、よくない養育環境の体験を示すようです。 

 世話の行き届かないと感じた家庭で成長してきていることが多く、その後は傷つけられることの防衛として自分自身に注意を向ける

Freedman(1989)

家族や社会に不適応の経歴

Greene(1991)、私訳

 ほうほう。そうなんだなあ。一応いろいろ文献をあたってみようと、あまり日頃見ない、Duckwrth&Anderson(1995)をみてみたら、ちょっとおもしろい記述があります。
 そもそも第4尺度を

 「私は正しくあなたはちがう」という信念を持つ

Duckwrth&Anderson(1995)

 そう、そうなんだよね。自己中心的で他罰的で。この端的な記述って結構重要な気がしました。
 閑話休題。「家族」のことだった。
 孫引用なんだけれど、これは興味深い

  Caldwell(1985)の仮説によれば、この尺度が最も高くなる人は、優しさを怖がる(a fear of caring)。彼らはやさしさのない家庭の生い立ちがあり、傷つくことへの防衛として、自らのやさしさを締め出してしまっている。

Duckwrth&Anderson(1995)私訳

 Freedman(1989)の記述とも近いですよね。彼らの特徴「自分自身に注意を向ける」自己中心性、やさしさのなさ、共感性のなさ、などもひょっとしたら「傷つくことへの防衛」。そう、だから例えば、また見捨てられること、またやさしくされなくなること、また愛されなくなること、愛着・安心をえられないこと。彼らの怒りや反社会性ってその裏返しなのかもしれない。
 

 文献



 Freedman,A.F.,Webb,J.T. and Lewak,R.(1989) Psychological assessment with the MMPI. Lawrence Earlbaum associates(MMPI新日本語版研究会訳(1999)MMPIによる心理査定,三共房)
 Green,R.L.(1991)The MMPI-2/MMPI An Interpretative Manual. Allyn and Bacon
 Duckworth,J.C.&Anderson,W.P.(1995)MMPI&MMPI-2 Interpretation Manual for Counselors and Clinicians 4th Edition.ACCELERATED DEVELOPMENT

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