さめ
町の中心は製薬工場。町の北側には日が差さない。朝だけ日が差す小学校
と役場。夕方だけ日が差す団地。団地の人びとが製薬工場で薬品をつくる。
工場の南側は日が差す良い土地ではなかっただろうか。あそこにはなにもない
よなあ。そういえば幼稚園があったな。と君は思う。町の人々は夕方、町の
ずっと南の方にあるイオンに買い物に行く。隣町からも来る。イオンはなんで
も売っている。猫砂も、牛乳も、サンダルも売っている。こんなに便利なお店
を町のはじっこに置いておくのはもったいない。町のまんなかにはセブンイ
レブンが三軒もある。ついこないだまで四軒あったけれどひとつなくなった。
鮫が喰ったのだ。おそろしいことだ。町の人々は鮫におびえながら国道を渋滞
させてイオンに集う。野菜を買って、また鮫のいる家庭へと旅立っていく。
悼むことをやめ、ともにあらねばならない。
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