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ロゼワインのことを知るともっとワインが面白くなる

世界的に消費が伸びており、日本でも少しずつではあるが露出が増えているロゼワイン。2014年のデータによると、世界合計のロゼワイン生産量は2,430,000KLであり、ワイン全体の9.6%とのことである(スパークリングワインはのぞく)。

ワイン全体の9.6%と聞くと、まだまだマイナーな印象を受けるが、私が留学時代に過ごしたフランスは、世界最大のロゼワイン生産国であり、消費国でもあることもあった。

そのため、スーパーマーケットの売り場に並んでいる量は、白ワインより圧倒的に多かった。その理由はやはり、その万能性である。簡単に言うと、白ワインと赤ワインの中間の香り、味わいが楽しめ、単独で飲んでも良し、料理と合わせても外れが少ない。

そんな思い出の多いロゼワインについて、作り手側の私見を交えながら、まとめてみたい。

ロゼワインは若い世代、また女性でよく飲まれている

2015年にOIVによるロゼワインに関するレポートが発表された。まずは、そこから幾つか情報を抜粋して、紹介していきたい。

以下、読み飛ばしたい人用に先に結論を書いておく。
1. 2002年と比較し、2014年では世界のロゼワイン消費量は1.2倍に増加 
2. 若い世代でロゼワインはより多く飲用している
3. 女性がより多く飲用している

まず、ロゼワインの世界主要生産国の2002年と2014年の消費割合の比較である。イタリア、スペイン、アメリカなど、減少傾向にある国はあるものの、フランス、イギリス、ベルギー、オランダなどは消費を伸ばし、世界全体では2002年に比べて、2014年のロゼ消費量は1.2倍と増えている。

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そして、世代別のロゼワイン飲用割合をみてみると、やはりフランスは全世代共通してロゼワインの飲用割合を示している。一方、他の国々は20歳から30歳といった若い世代の飲用割合が高い傾向がある。その傾向は日本も同様だった。

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次に性別によるロゼワイン飲用割合のデータをみると、ほとんどの国々で女性がより多くロゼを飲んでいるとのことだ。

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これらのことを総合すると、近年のロゼワイン消費量増加は若い世代、その中でも女性によって支えられていることが分かる。

ロゼワインの造り方

実は世界的に見てもロゼワインには明確な定義はない。個人的には、赤ワイン用のブドウ品種を原料の1つに用いて、白ワインのように造り、そして少量のアントシアニン(果皮に含まれる赤い色素)を含み、ピンク色の色合いをしたワインと認識している。

そのアントシアニンの含有量のロゼワイン、赤ワインのイメージを以下に記載する。

[アントシアニンの含有量]
ロゼワイン :15−60  mg/L
軽い赤ワイン:90-250 mg/L
濃い赤ワイン:>350    mg/L


以下、造り方の詳細に触れる。

Direct pressing (直接圧搾法)

直接圧搾法は、まさに赤ワイン用ブドウを用いて白ワインのように造る醸造方法である。ただし、直接圧搾法の中でもとれる選択肢が2つある。1つ目は果梗から果粒を取り外し、果実を少し破砕してやった状態でプレス機に入れて搾る方法2つ目はブドウを傷つけず、房のままでプレス機にいれて搾る方法である

前者のほうが、果皮に含まれるアントシアニンの抽出が促進され、それ以外にも香り成分、渋みを与えるタンニンも抽出されやすくなるため、前者よりも色調、香味ともにより濃いものができる。さらに、プレスする前に時間を2時間以上おき、果皮と果汁を浸漬させておく行程(Skin contact、スキンコンタクト)を組み合わせると、さらに濃さを調整しながら造ることができる。白ワインでは、果皮に含まれる香り成分を抽出するためにソーヴィニヨン・ブランなどのブドウ品種で適用されることが多い。

後者は、前者と比べると柔らかく、色の淡いロゼワインが出来ることが多い。よっぽど色の濃い赤ワイン用ブドウ品種を使わないと、色が十分に出ず、まるで白ワインのようになってしまうこともあるので、しっかりした色合いのロゼワインを造りたい場合は要注意だ。

果皮に傷をつけないで、搾ることで、果皮に含まれるアントシアニン、タンニンの抽出が抑えられる代わりに、繊細でよりミネラル感を強調したワインが出来る。白ワインでは、シャルドネなどのブドウ品種で適用されることが多い。


Saignée (セニエ法)

セニエは、「血抜き」という意味のフランス語である。この方法は、より濃厚な赤ワインを造るための行程として捉えられている事が多い。

赤ワインを造る際に、果梗を取り除き、果粒になったブドウを破砕し、タンクに投入することで、ブドウ自身の重みが次第にかかり、果汁がタンクの下部に溜まっていく。

その果汁を別のタンクに移すことで、元タンクの中に残ったブドウは、果汁が減り、果皮の割合が多くなる。その状態で醸し発酵して出来た赤ワインは、セニエをしない赤ワインに比べてより果皮の成分が濃くなる。

一方で、別のタンクに移された果汁は、清澄化など一定の下処理を行った後、発酵することでロゼワインとして仕上げることが出来る。

セニエ法は、赤ワインを造るための副産物として考えられる事が多く、なんとなく邪道であるとか、直接圧搾法に劣るとされがちだが、ロゼワインの造り視点でみると、スキンコンタクトをした後、プレスをせずに自然としたたる果汁(フリーランジュース)だけを利用した、贅沢な造りと言い換える事もできる。

通常、直接圧搾法だと、ブドウ1000kgに対して、少なくとも600Lー750Lの果汁を圧力をかけて搾り取る。一方で、セニエ法では、圧力をかけないため、ブドウ1000kgに対して、せいぜい100Lー200L程度の果汁しか抜き取る事が出来ない。実際、セニエで得たブドウ果汁は、透明感があり、色合いもとても美しく、味わいも柔らかい。

私自身は、赤ワインを濃くする目的でのセニエをあまりしない(濃くはなるが、バランスが崩れることが多いため)ため、ロゼワインを造る必要性にかられた場合、あえてセニエ法を選ぶ事が多い。ただし、スキンコンタクトの時間は2時間以内にとどめ、必要以上に抽出しないことを心がけている。

スキンコンタクトを長くすると、色もそうだが、渋みも濃くなりすぎてバランスが悪くなるのと、果皮由来のカリウムが溶け出し、ワインに含まれる酒石酸が酒石として析出してしまい、ワインの酸味が減るためだ。

ロゼワインの新しい醸造技術

プロヴァンス地方のロゼワイン、ボルドー地方で造られたロゼワインにとって重要な香気成分として、グレープフルーツ様の香りに寄与する3-mercapthexan-1-ol(3MH)、パッションフルーツ様の香りに寄与する3-mercapthexyl-acetate(3MHA)が挙げられる。

これらの香りの成分はチオール化合物といい、ソーヴィニヨン・ブランから出来た白ワインの特徴香としても知られている。これらの香気成分を高めるために、Juice stabulationという醸造方法が採用されはじめている。

直接圧搾法或はセニエをすることで得た果汁を、通常は一晩5℃から10℃で冷却し、果汁に含まれる過度な固形分を沈殿させ、清澄化する行程(débourbage)を踏む。

ところが、Juice stabulationはその冷却温度を5℃以下にし、かつ期間を7日から14日に延長、定期的に不活性ガスで撹拌する。その行程を踏む事で、果汁に含まれる固形分からチオール化合物の元になる成分を抽出促進でき、出来上がるワインの香りを増強でき、かつ、ワインのテクスチャーも改善できるという。

・長期間冷却タンクをふさぐため、コストが高いこと
・意図しない微生物汚染のリスクがあること
・保存中に果汁を酸化させないこと
・そもそも理想的な冷却能力を持つタンク設備が少ない


以上のようにリスクや制約が高いことが課題として挙げられる醸造法であるが、プロヴァンスのロゼの著名生産者の中で採用され始めている。

ロゼワイン以外では、ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランを用いた白ワイン醸造でも採用されている。ロゼワインの品質をさらに1つ引き上げるために、注目したい方法だと思っている。

ロゼワインのこれから

世界最大のロゼワイン生産国であり、消費国であるフランスは、冬(15%)に比べて夏(35%)に多く消費される。暑い夏に重たい赤ワインより、フレッシュなロゼワインを選びたくなる気持ちはとてもよくわかる。

日本においても湿度が高く、暑い梅雨時期や夏も、赤ワインよりは白ワインやロゼワインを選びたくなるのではないだろうか。

より多くのお客様に、ロゼワインの魅力を知って頂き、日本のワイン市場をいっそう盛り上げることができればと思いながら、2020年の仕込みでも工夫を凝らして、より品質の高いワイン造りに望みたいと思う。






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