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なぜ、ボードゲームなのか?

経営のリアルを表現したかった。その中で、よりよい経営を模索できるようにしたかった。経営の面白さ、やりがい、奥の深さなどもわかって欲しかった。そして、経営者や経営に関わる人たちが、経営を正しく理解し、健全な経営行動を通じて、「いい仕事をして、いい会社になって、いい社会ができていくこと」をずっと願ってきた。それに資するよう経営コンサルティングを通じてキャリアを重ねてきた。

この30年間で1000数百社の経営者や幹部の方々とご縁をいただき、微力ながらお手伝いさせてもらってきた。独自の経営メソッド「◯△□の経営」も開発し、小冊子や著書も出版してきた。経営士会全国研論文も20回を超えて投稿し、持論をご披露させてもらってきた。

それでも、当初の「おもい」は少しも現実のものとすることはできなかった。いくら本を読んでも、論文を書いても本を出してもなかなかお客様や関係者の方々に響き、喜んでいただくことは少なかった。

主人公は、お客様であり、現場で働く人たちなのだ。「教える側と教えられる側」「先生と生徒」「お金を出す側とお金をもらう側」という関係性を超えて、「助けを求めているお客様が主人公」として、それを支援して「ともに歩む」ような状態にもっていけないものだろうか、と考え続けてきた。そのような中で、不本意ながら自己破産という大変貴重な経験をさせていただくことになった。5年前のこと、私がちょうど還暦の時の出来事であった。

おかげさまで、創業30年を十分に振り返ることができ、「六十にして化す」ことが出来ることになった。幸いなことに、資産はほとんど失ったが、時間は有り余るほどあり、書籍や経営資料は残ったので、改めて研究開発に専念することができた。そして、前述の「お客様が主人公として、主体性自律性を持っていただいた上で、伴走する」ための考え方と方法についても考える時間も精神的余裕を持つことができた。それを再起の道雄としてここ数年を踏みしめてきた。そして、私なりに行き着いたのが「ボードゲーム」だった。

経営は、絶えず動いて、変化して、生きているものである。社会も時代も、人も会社もみんな変化の中で関わり合いながら進んでいる、そして、みんなほとんど一回性の中で個々に行動している。そのような経営の現実を表現するには、ボードゲームが最適であると考えたのである。将棋というボードゲームにハードウエアは変わらなくても盤上で繰り広げられる勝負の世界は1回として同じものはない。それでも、型や定跡というものはある。

経営ゲームの基本イメージは、囲碁・将棋・チェス、戦国時代の車座になって軍事情勢地図を囲んでの軍略会議、日本海軍の海図と陣形を動かしながらの戦略会議である。そして、西順一郎氏の開発した「マネジメントゲーム」、嶋崎喜一氏の開発した「経営ゲーム」やカードゲーム類である。

経営は、会社の数だけ、経営者の数だけある。経営承継においても「代々初代」という言葉があるほどである。そうは言っても、どんな時代においても変わらない原理・原則・基本がある。そう考えて、人類の平和な社会を願ってドラッカーは『マネジメント』を記した。

そのような原理・原則・基本に加え、マーケティング、経営実務フレーム(書式・フォーマット)、起業・事業プロセス、会計システム等の要素を組み込み、トータルなシステムを基本イメージに基づいてゲームボード上に表現する。その上で、一回性の経営ゲームが展開される。そのゲームの中での出来事をいかに生起させ、気づきや学びにつなげていくか。

さらに、面白さ・楽しさ、ハラハラ、ドキドキ、ワクワク感うや達成感や向上心刺激等をどれだけ演出することができるか。そのために何ができるか。コンセプト、シナリオ、ルールづくりを明確にし、ボードデザインやコマ類づくりを進めていく必要がある。さらに、具体的なデザインや文章も確定させていかなければならない。

そのための重要ポイントとして、以下のようなものが挙げられる。

①目標を明確にすること・目標管理の基本を示すこと。ここの目標として「プレート目標18枚、個人資産300万円、会社利益500万円」とした。
それによって、ゴールクリアできるか否かが事前にわかる。この具体的数字の決定も経験からのもので、論理的裏づけは弱い。回数を重ねる中で検証していった。

また、「決算カード」をつくることで、目標管理の基本を組み込むことにした。予実績管理の項目を記した書式とした。

基本的には、初心者ルールにおいて5期前後でゴールクリアできるように作られている。期をまたいで目標達成する、という感覚も身につけて欲しいと思っている。最初の1期だけでは絶対にゴールクリアはできないようにルールづくりをしてある。

②そのための数値化のルールづくり。会計ルールに則り、取引を発生させ、数字世界を作らなければならないし、そのためのツール、すなわち、ゲーム用のお金を用意しなければならないし、お金を置く場所も作らなければならない。それに、取引を発生させる仕組みとしてカードを採用した。カードに取引内容を記載しておき、その指示に従う、というものだ。

③面白さ・楽しさ、もっとやりたい感の創出。簡単に出来てしまうのではすぐに飽きてしまう。なかなか出来ないのでは、やる気が失せてしまう。出来そうで出来ない、出来なそうだが出来てしまう。そんなゲームに仕上げていかなければならない。そのための工夫の1つがサイコロの採用。運の要素を入れる。運に振り回され、軽やかさを出すために陶器製の器にした。音と弾む様子がゲームらしさを演出している。また、カードの内容と扱い方の工夫。目標の数字にプラスになるカードとマイナスになるカードを用意して、その内容、枚数によって、調整していく。これらはすべて実際にやりながら検証していった。

④経営の基本・原理・原則の組み込み。当ゲームは、経営の基本の教育学習支援ツールとして企画開発制作されている。そのベースには、自論の「◯△□の経営」がある。「経営とは、基本を徹底し、目標を明らかにして、行動する」という定義に基づいて図形図式的に「見える化」した世界で展開されている。「基本は□であり、◯は目標であり、△は行動である」。また、「◯△□」の図形を感性論哲学の「原理としての感性」に置き換えて展開している。「感性は、動的平衡作用として働いており、調和作用・合理作用・統合作用という3つの作用に大別でき、感性の3作用と呼んでいる」ということで、調和作用を◯、合理作用を□、統合作用を△に当てて展開してきている。それ故、宇宙の原理、経営の原理として「◯△□の経営ピラミッド」をデザインし、それをボードゲームのプレイフィールドにレイアウトしてある。「◯△□の経営」についてはすでに数回論文寄稿しており、関係図書も3冊ほどキンドル出版もしている。これらの内容を当ゲームの全部に反映してある。とは言え、そういうことを感じさせないように制作を進めている。それがあると面白さ・楽しさが損なわれるからである。縁ある人だけが「目覚めた経営の世界」に入ってくるのである。その分母を多くするのが当ボードゲームの役割である。

また、コマづくりとして4種類のプレートを用意した。6大経営資源「人・物・金、情報・時間・技術」の展開でもある。特に「ビジネスコミュニケーション・プレート」にはそれが強く反映されている。社会的人間の本質はコミュニケーションであり、経営や仕事に限った場合、「ビジネスコミュニケーション」ということになる。それは、煎じ詰めれば「売る人」と「売る人の扱っている商品・サービス」と「その関係者」、そして「買う人」からの成るコミュニケーションである。人がいて、社会があって、問題・課題が生まれ、そこに商品・サービスが生まれ、ビジネスが育っていく。そういうことをボード上に現出させるのである。そのために作られたのが「ビジネスコミュニケーション・プレート」5枚である。スタンダード版では9枚だが、シンプルにするために4枚減らしている。その上で、基本となる項目をまとめたのが「基本プレート」9枚である。

⑤起業・事業の立ち上げ、経営実務・実践に使える配慮。単なるボードゲームに止まることなく、起業・事業、経営の実務に役立つ経営メソッド&ツールの組み込みをしてある。生まれてきたビジネスをシステム的に組織的に計画的に進めようというのが「経営」である。

起業・事業・経営の手続きや準備の内容の基本を示しているのが「インフラプレート」9枚であり、経営実務の主な書式やフレームの基本を示したのが「フレームプレート」9枚である。

プレート類は基本的に9枚に決めて制作してきた。自論の「8点メモ」が9マスメモ(マンダラメモ)だからであり、いろいろな展開余地が生まれるためである。

⑥経営シミュレーションの配慮。実際の経営は1年という時間の中で進められる。「経営のワンイヤールール」である。1年12ヶ月という時間と暦の中で、生活も仕事も巡っている。1年の中で始まりがあり、終わりがある。そこに自ずとサイクルが生まれ、リズムが生まれる。その中でビジネスコミュニケーションする。目標・ゴールを目指して、問題・課題を解決しながら取引をして、条件整備と利益創出をしていく。

このような感覚を持ってもらうために、「経営カード」をつくった。時間をつくり、事態を進めるための工夫である。そして、月を示し、月のテーマを記した。月のテーマについては、「基本プレート」や「フレームプレート」等の内容から引用している。

さらに、この1年12ヶ月のサイクルやリズムに慣れることで、実際の年間実行計画のサイクルやリズムにも慣れてもらえるように、との配慮がなされているのである。
また、それは、年度経営計画の実行計画と整合できるように配慮されている。

さらに、複数期にまたがる中で目標達成、ゴールクリアするようになっているので、より深い経営センスが育つように配慮されている。

そして、経営ボードゲーム「みんなの経営物語ベーシックシンプル版」のベータ版までやってきた。

改めて、振り返ってみた次第。

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