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「奈々子に」 吉野弘さん こんなに心を揺さぶられる?!

中学生の授業を離れて、2年が経った。
人事部に異動となった今は、新入社員や大学生に就活講座など、講師としての仕事を持っている。

今日はたまたま、社員面談のため、とある教室に立ち寄ったのだが、早く着きすぎて時間を持て余していた。

何気なく本棚に目を向けると、中学校の教科書が‥‥。2年前までは、毎週、学校進度を確認し、読み込みまくっていたのだが、久しぶりに手にしてみた。

独特の表紙の厚み、艶のある紙質、パラパラとページをめくる時の教科書独特の感覚に、ちょっとした懐かしさを感じた。

授業を担当していた頃は、試験範囲になっている単元だけを読み、試験に出るポイントをだけを集中して読むという読み方。どんなにおもしろい文章でも、教科書となると、そういうフィルターをかけて読んでしまう。作問する立場になって、出題のポイントを探りながら読むという癖がついてしまっていた。

でも今日は違った。まず手に取ったのは中学一年生の国語の教科書。
学校図書という出版社。
パラパラとめくると、あぁ、これ教えていたなあと、見覚えのある文章たちが、次々と現れる。

出会ってしまった「奈々子に」

ふと目にとまったのは、吉野弘さんの「奈々子に」という詩。

テスト対策でやったなぁ……。

読みはじめると、どんどん引き込まれていく。
一瞬にして、自分の妻と娘の姿が思い浮かぶ。
愛おしさ、せつなさ、もどかしさ……次々といろんな思いがあふれ出す。
うっすらと目頭が熱くなってきたが、そばに社員がいるので、
ぐっとこらえて気持ちをリセット。

落ち着いて、もう一度読み返す

もう一度、落ち着てい読み返してみた。
教材として読んでいたときとは、かなりちがう感覚。
読みながら、妻と娘のことが、頭を駆け巡る。
愛おしい気持ち、切ない気持ちが、沸き上がる。
目頭が熱くなってくる。

さらに、もう一度、落ち着いて読み返してみる。
なぜ?
不思議だ。
2年前に読んだときは、これほど心を揺さぶられることはなかったはずだ。
まだ、2年しかたっていないのにそんなに感じ方が変わる?

感じ方の変化の原因は?

感じ方の変化の原因の一つは、職業的なものだと思われる。
授業を担当していたときは、教科書や問題集は、脳が即座に教材として認識し、フィルターをかけてしまい、意識せずとも機械的な読みモードになってしまう。そういえば、詩というものを読んで、いい詩だなぁ……くらいの想いはあったが、これほどまでに揺さぶられる瞬間はなかった。

もう一つ、こどもに対する思いが強まったからか?……とも思える。
当時、1歳か、2歳、もちろんこどもはかわいいという思いはあったが、今と比べると、娘に対する思いは変化してきている。

赤ちゃん時代の娘への想いは、ただかわいい。表情がかわいい、うごきがかわいい、……そういう部分でお想いが止まっていたかもしれない。

今は、保育園での友達の関係も生まれ、自分の想いをことばで表現するようになり、しっかりと感情も出す。かわいさや、いとおしさがさらに増すとともに、成長していく娘の未来を考えることが大きく増えてきた。

一人の父親として、素直な気持ちで「奈々子に」に出会えたからこそ、大きく心を揺さぶられたのだろうと思う。

文章を通じて、こんなに感情を揺り動かされたことは、久しくなかった。

「詩」が気になり始めた。言葉の衝撃……。

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