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オルガの翼/エリ・グラップ監督

エリ・グラップ監督の『オルガの翼』を見る。グラップ監督は1994年リヨン生まれ生まれで、スイスに移り長編でのデビュー作がこの『オルガの翼』だ。

2013年のキーウ。親ロシア派のヤヌコーヴィチ大統領の汚職事件を追うジャーナリストの母親から離れ、スイスのの体操ナショナルチームに所属することになった15歳のオルガの目から、圧政に蜂起する市民によるユーロマイダン革命を描いた作品だ。主人公のオルガを演じるアナスタシア・ブジャシキナは、2001年にウクライナ東部で生まれたプロのアスリートで、グラップ監督の目に留まり主演に抜擢されたという。

ウクライナのそれとは比べ物にならない設備を備えるスイスのトレーニングセンターで、自分のアスリートとしての道を切り開き始めたオルガだが、欧州選手権が近づくにつれ、激しさを増す政権との対立がスマホ画面を通じて刻々とオルガの元に入ってくる。かつてのチームメートがデモにのめり込んでいく姿を遠く離れたスイスでから見守るしかない自分。彼女の選択は大きく揺らぎ始める。

映画は今回のソビエトのウクライナ侵攻以前に撮り終えたものだが、なぜこのウクライナという小国が、かくも巨大な隣国に抵抗し続けるのか、その核となる部分が見えてくる。物語はグラップ監督の創作だが、映画内で使われる市民の抵抗の姿は、デモ参加者自身がが実際に撮影したSNS映像であり、また体操選手たちの演技や練習風景はリアルな彼らそのものである。通常私たちがテレビで見る体操演技とは違った、躍動感があるカメラアングルの数々に見入ってしまうとともに、スポーツとは何か、平和とは何かが強く問われている映画であった。

監督:エリ・グラップ  
出演:アナスタシア・ブジャシキナ | サブリナ・ルプツォワ | カテリーナ・バルロッジョ


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