マガジンのカバー画像

2023富岡駅と

5
2023年10月から11月末まで郡山のギャラリーで展覧会をした。富岡から郡山に避難して来たという方にお会いし、そのことがずっと気になっていた。富岡は長らく代替バスの起点となってい… もっと読む
運営しているクリエイター

記事一覧

双葉駅にて

その1 2023年12月9日 土曜日 東日本大震災以降「当面の間運休」とされていた、いわき駅 - 仙台駅間の特急(当時はスーパーひたち)は、2020年3月末に常磐線の不通区間であった富岡駅 -浪江駅間の復旧に合わせ特急「ひたち」として復活した。都内からいわき駅までは、相応の本数の「ひたち」が運行するが、いわきより先、仙台に至る「ひたち」は1日3往復のみである。仙台駅16時06分発特急ひたち26号に乗車。 今晩は富岡泊だが、ふと思いついて双葉駅で下車することにした。自分は常

富岡駅と海と

その2 2023年12月10日 富岡駅から海岸までは400メートルほどである。震災後、津波で流された駅舎で有名になった。 冬のこの時間、朝5時半はまだ真っ暗闇の中だが、駅前のホテルから東に向かって真っすぐ歩くと、ものの5分で県道391号広野小高線に突き当たる。その先が港へと続く道だ。 東の空に細い月が見える。日曜日だからか県道の交通量は少ないが、何台かの車が自分を追い越して港へと下りてゆく。巨大堤防で嵩上げされたその場所から、港を、そして海を見下ろす。富岡漁港は震災後に

富岡駅から大野駅へ

その3 2023年12月10日 日曜日 承前 駅前にある富岡ホテルをチェックアウトする。富岡ホテルは2017年10月に富岡町民8名が立ち上げたホテルだ。 国道6号線を北に20分ほど歩く。双葉警察署を超え東京電力廃炉資料館角を左折、次の角を右折し常磐線をくぐり、なだらかな坂を登ると右手に富岡町役場、図書館などがある文化交流センター、左手にふたば医療センター、廃炉国際共同センターなどがあり、その先に2021年7月にオープンした富岡アーカイブミュージアムがある。9時ちょうどに若

夜ノ森駅から富岡駅へ

その4 2023年12月10日 日曜日 夜ノ森駅12時32分着。もう取り壊されてしまったと思っていた駅前の黄色い「理想郷」の看板はまだそのまま残っていた。もっとも商店街の入口の4店舗を残して周りは全て更地となった。次の上り列車は約2時間後だ。 ちょっと無謀だとは思ったが、夜ノ森の桜並木の突き当たりから国道6号線を南下し、富岡駅まで歩いてみようと思った。2020年3月に常磐線が全線開通して以降、帰還困難区域を通過する代替バスの経路であった6号線は、車を使わない自分にとっては

そして木戸駅と

その5 2023年12月10日 日曜日 承前 木戸駅14時57分着。原ノ町に戻る下り列車は15時48分発。ゆっくり過ごす時間はない。 ここはもう穏やかな過疎地に戻っていて(もちろん自分は以前の楢葉町を知らないのだが)、数年前から稼働するさつまいもの加工工場、貯蔵倉庫で、今日も人が働いている。巨大堤防脇の5本の木はさらに一回り小さく、おそらく数年後には私たちの視界から消えてしまうことだろう。今回はここまで。