富岡駅から大野駅へ
その3 2023年12月10日 日曜日
承前 駅前にある富岡ホテルをチェックアウトする。富岡ホテルは2017年10月に富岡町民8名が立ち上げたホテルだ。
国道6号線を北に20分ほど歩く。双葉警察署を超え東京電力廃炉資料館角を左折、次の角を右折し常磐線をくぐり、なだらかな坂を登ると右手に富岡町役場、図書館などがある文化交流センター、左手にふたば医療センター、廃炉国際共同センターなどがあり、その先に2021年7月にオープンした富岡アーカイブミュージアムがある。9時ちょうどに若い職員が施設の扉を開けた。展示は古代の遺跡のことから近代になっての町の成り立ち、戦中・戦後社会から原発事故までを網羅する。当時の「原発ができたおかげで出稼ぎに出なくてすむようになった」という言葉は重い。
地震・津波の後、富岡町は初め川内村に避難した。だが、第一原発の事故を受け、しかし詳しいことは何も知らされぬまま、川内村と一緒に郡山へと集団避難をする。郡山のギャラリーで、実際に富岡の方にお会いしたことがある。福島県のどの地域をとっても、震災・原子力災害と無関係ではない。タクシーの運転手と富岡について少し話をする。
富岡駅10時05分発。一度原ノ町駅に向かってロッカーに荷物を預けるためだ。沿線ではいわき駅と原ノ町駅以外は無人駅だ。無人駅にはコインロッカーも無い。原ノ町駅10時44分着。11時08分発特急ひたち14号に乗車。浪江、双葉と停車し大野駅11時35分着。
西口の駅前一帯は造成作業中で、複数の重機だけが並んでいる。
「ようこそおおくまへいらっしゃいました」の看板はかろうじて残ってはいた。だが背後にあったコンクリートの建物もノウゼンカズラの木も、全て取り払われていた。2021年6月にここ大野駅を訪れた時は、商店街はまだ当時のままに残っていた。あっけないものである。ちょうど1年後の2024年12月に、敷地面積約15700㎡の商業施設がこの場所に開所する。入居する7店舗のうち3店舗が地元の事業者、残りは東京からの参入組だ。
東口の児童公園も取り壊された後だった。今年2023年3月の訪問時には、雑草に埋もれた遊具の中で桜の花が咲き誇っていた。更地になったこの土地に桜の木が2本残されていたのがせめてもの救いだ。大野駅12時27分発。つづく
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