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#4 LOOP BLAKE 第1章 異世界 第3話「藍川光男VSクリフ・ポーランド」

 竜賀は自分の頭に向けられた銃口から銃弾が放たれる瞬間をスローモーションの様に目で捉えていた。竜賀の頭めがけて放たれた銃弾は、咄嗟に押し飛ばした光男のおかげでかろうじて頭の横をかすめただけで終わった。

光男「クリフ!!何かの間違いだ!!うちの息子が殺される理由はない!!」

クリフ「黙れ!!その呪いの紋章を持つデュナミストたちを殺害するのが我々の任務であり平和のための犠牲なんだ!!!」

 クリフはまるで親の仇を見る様な目で竜賀を睨みつけ、銃口を再び竜賀の頭に向け今度こそは必ず殺すと言わんばかりに狙いを定めた。

光男「待てって言ってるだろうが!!!!」

 光男は竜賀を本気で殺そうとするクリフの右腕に身体ごとしがみつきガトリングガンを奪い取ろうとした。しかしクリフの身体はどう見ても光男よりひとまわり大きく、とてもじゃないが力で勝負して相手から武器を奪い取れる様には見えなかった。

クリフ「邪魔だ!!これ以上妨害するならお前の息子を殺す前にお前をあの世に送ってやる!!」

 クリフは息子を必死に庇おうとする光男に標的を変え、邪魔者を先に行動不能にして本命を後回しにすると判断した。クリフは自分の腕にしがみついている光男を振り払おうとした時、光男は咄嗟にクリフの腕を放し投げ飛ばされるのを回避して間合いをとった。武道で光男が得意とする近すぎず離れ過ぎない絶妙な間合いを取り大きな呼吸を1つした時、光男は息子を狙われる恐怖感や焦燥感を抑え込み冷静な精神状態になった。

クリフ「まずはお前からだ、藍川光男」

光男「クリフ、その頭に上った血を一旦下げて冷静に話し合いはできないのか?」

クリフ「反論の余地はない。それが俺の任務だからな」

 そういうとクリフはマシンガンの銃口を光男に向け容赦なく発砲した。

 ガガガガガガガガ!!!!

 しかし銃を打つ気配を感じていた光男はマシンガンが撃たれるよりも早く動き出し、身を屈めてクリフに物凄い速さで近づいた!!
クリフは自分の腹に向かって光男が全力タックルしてくると察し咄嗟に衝撃に備えて上半身を後ろに下げようとした。しかし光男は相手の動きを一手先まで読み切っていた。光男は重心を後ろに下げようとしたクリフの右足首を掴み自分側に引き寄せながら上に持ち上げた!!

クリフ「うおっ!?」

 クリフは自分の体が今ひっくり返っている事にも気づかずマシンガンを空に打ち続けていた。光男は引いていたクリフの右足首を離し、身体を起こしながらサッカーボールを蹴り出す様な体勢に切り替え全力でマシンガン目掛けて蹴りを入れた。

光男「うおおりゃああ!!!」

 ガアン!!!!

 クリフの手からマシンガンが離れ墓場の外れの林の中に消え、再び光男はクリフに真正面に向き合った。クリフはマシンガンを失い気が動転すると思われたが今度は腰のホルダーから拳銃を引き出し、今度こそ光男の頭目掛けて銃弾を打ち込もうと構えた。

光男「その手は食らわねえよ!!」

 光男はクリフに接近し今度は拳銃を持つ手首を下から押し上げ銃弾を逸らしながら、クリフの手首を捻りながら拳銃を奪い取り相手を組み伏せた。

クリフ「くそ!!」

光男「なんだよ。呆れたな。強そうに見えるのはデカい図体だけか?」

 クリフは光男の挑発に冷静さを失い今度は腰からナイフを取り出し光男に向けて刺そうと突進してきた。光男はこれらの攻撃に対しても、武道で磨いた体捌きで冷静に対処した。

 父・光男とクリフの攻防を傍で見ていた竜賀は、はっとなって2人の戦いを終わらせる為に自分に何ができるか考え始めた。辺りをキョロキョロしながら何かないか何かないかと見回していると竜賀の視線には、剣道帰りで持ってきていた自分と父親の竹刀があった。

竜賀「父さんの竹刀…バカか…相手は今ナイフを使ってるんだぞ…!こんな棒切れを渡したところで何の気休めにも…でも…」

 竜賀は再び視線を戻すとそこには大柄のナイフ使いに素手で挑む父親の姿があった。懸命に息子を守るために身体を張って、文字通り命懸けの戦いをしている父親にただ守られている自分が情けなくなり竜賀は藁にもすがる思いで父親の愛用の竹刀に飛びついた。

竜賀「待ってろよ父さん…今すぐ武器渡すからな」

 光男の竹刀袋から竹刀と鍔と鍔止めを取り出し必死に竹刀を組み立てた。竜賀は慣れた手つきで竹刀を完成させ父親が戦っている場所に目を向け、あらん限りの大声で光男に呼びかけた。

竜賀「父さん!!これ使ってっ!!!」

 光男とクリフは声のした方へ視線を向けるとそこには手に持った竹刀を全力で光男に向かって投げようとする竜賀の姿があった。光男はクリフよりも早く反応し竜賀の投げた竹刀に向かって一直線に走り出した。

光男「ナイス竜賀!!!助かったぜ!!!」

 光男は宙に弧を描いて舞う竹刀に手を伸ばし、竹刀の刀身を掴み地面に受身を取りながら体勢を立て直し、再びクリフに向かい合った。

クリフ「おいおい…息子から武器が渡されたと思えば…ただの木製のおもちゃかよ…俺もとことん舐められたな」

光男「そう思うか?…悪いけど…こっから先お前が俺に勝つことはねえぞ…1番の得意分野で戦うからな!」

 光男は竹刀の柄を両手で握りながら中段の構えを取り、ゆっくり摺足で自分の最も得意とする間合いを取ってきた。クリフは右手にナイフを持ちじりじりと近付いてくる敵を見据えながら次の攻撃に備えていた。クリフは一気に猛スピードで突進してきた勢いで光男の腹にめがけてナイフを突き立ててきた。

クリフ「いい加減くたばれぇ!!!」

光男「甘いッ!!!」

 光男は自分に向かってくるクリフの右手首に狙いを定めて、竹刀を素早く振り下ろし間髪入れずに抜き胴の構えを取りクリフの防弾ジョッキの下を目掛けて振り切った。クリフはナイフを落とし、竹刀が腹に直撃した。

クリフ「グアア!!」

光男「まだまだぁ!!」

 痛みに怯んだクリフの左膝を目掛けて横薙ぎ、そして脇腹に大振りの横薙ぎでクリフをさらに痛みで怯ませ動けない状態にした。

クリフ「くそ!!何でこんな棒切れ如きに…!!」

光男「武器の強さに縋り付けば…隙が生じる…」

クリフ「な…んだと…!!」

光男「最後に頼るべきは…自分自身だ」

クリフ「ふざけるなぁ!!!能力を持ってるわけでもないただの人間に俺が負けるわけ!!!」

 クリフが落ちたナイフを再び拾い上げ光男に襲い掛かろうとした時、光男は剣道の中段の構えを取った。光男はそこで初めて本気の目をした。

光男「一刀入魂!!」

 光男は竹刀を両手で構えたままで全力で突進して、竹刀を縦に、横に、斜めに連続で何発も振り回してクリフの頭や胴体、足、首元に叩き込み最後に全力の突きを頭の眉間に叩き込んだ。クリフの巨体が信じられないほど浮き地面に叩き付けられるようにして突き飛ばされた。

クリフ「ぐはああ!!?」

光男「藍川光男流剣術必殺あいかわみつおりゅうけんじゅつ百焱燎嵐ひゃっかりょうらんだ…」

 竜賀は父親と毎日稽古していたはずだったが、これほど強かったと言うことをこの時初めて知った。自分より体がずっと大きいものに恐れず立ち向かい倒してしまう目の前の男に今まで感じたことのない感情を抱いていた。

クリフ「ぐ……シッット!!」

光男「さぁクリフ話してもらおうか?」

 光男は倒れたクリフの前に立った。クリフは全ての武器を失って竹刀を持って立ち塞がる光男を見て死を覚悟した。しかし、光男はゆっくりしゃがんでクリフと目線を合わせるようにして竹刀を地面に置いた。

クリフ「俺を殺さないのか?」

 クリフはヘルメットをゆっくり外しながら聞いてきた。クリフは金髪の短髪でブルーの瞳を持った白人であった顔を初めて見せた。

光男「俺たちは別に殺人をしにきた訳じゃないんだ。本当に怪しい渦の中に飲み込まれて、気付いたらここに息子と一緒にいたんだ。だから説明して欲しい。ここは一体どこなのか?ここで何が行われていたのか?あんたはここで何をやってたんだ?そして…」

 すると光男は竜賀を一瞥いちべつした。

光男「あんたは何で息子の手の平にある丸い紋章もんしょうみたいなものを見て突然息子に襲いかかってきのか?あの紋章もんしょうみたいなものは何なのか?あんたの知る限り、話せる限りのことを全て話してほしい…頼む」

 光男はここでクリフに「命令」めいれいすることもできたが、あえて「頼む」たのむという言葉を選んでいた。

クリフ「お前たちは本当に何も知らないんだな?」

光男「ああ…」

 さっきまで遠くで見守っていた竜賀が2人のそばに正座をして、クリフに言われて気付いた右手の平の紋章を見せるように手を見せた。

竜賀「さっき言ってたこの右手の紋章だって、あなたに言われるまで全然あるって気づかなかったんだ!これは一体…」

 クリフは竜賀の目に敵意が無いかをじっと見て、

クリフ「お前…名前は?」

竜賀「竜賀りゅうが藍川竜賀あいかわりゅうがだよ」

クリフ「竜賀…その手の平にある紋章は呪われた力の象徴だよ」

光男「呪われた?」

 竜賀は改めて自分の右手の平を見た。

クリフ「ああ…その呪われた力を持つ者達がこの街に潜伏していると言う情報があってな。それを駆逐するために俺たちマードック部隊はこの街を一斉摘発いっせいてきはつしているんだ」

光男「一斉摘発いっせいてきはつって…」

 光男は絶句した。その呪いを知らないうちに手に入れた息子を組織的に殺そうとする場所に引き摺り込まれていたのか。

クリフ「そののろわれたチカラ名前なまえ『伽霊能力』ギアルスキル


                                  続く

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