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#3 LOOP BLAKE 第1章 異世界 第2話「何かが違う世界」

 目の前に広がる炎に焼かれ黒煙立ち上るスラム街で、肺が焼けるような空気が漂う中竜賀と光男はあたりを見回して今まで自分達が日常を送っていた世界とは全くの別世界に呆然としていた。

竜賀「お父さん・・・ここ・・・日本じゃないよね・・・」

 竜賀がつぶやいた言葉にはっとした光男は徐々に頭が回り始めた。

光男「ああ・・・おそらく・・・アメリカとか・・・英語圏えいごけんの国だと思う」

 炎に燃えているレンガの建物の看板が英語表記であること、そして広い道路のわりに信号機のない街並みがテレビやネットでしか見たことのない外国の世界を連想させるのはそんなに難しくなかった。

光男「竜賀・・・とりあえず今来た道を元に戻るぞ」

竜賀「うん・・・今すぐここからーーー」

?「Hey!!We’re you guys still alive!!!」

 突然英語で呼び止められ2人が咄嗟に振り返った先にはマシンガンのような銃火器を携えている黒い防護服、黒いマスクを着た軍隊員のような男が立っていた。

 竜賀は今自分達に助けが来たと思って思わず駆け寄ろうとした。


軍隊員「Don’t move!!!」

 突然その軍隊員は銃火器を竜賀に向け、引き金を引いた。

 ガガガガガガガガガガガガッ!!!!!

 鼓膜を裂くような連射音と共に竜賀にマシンガンの銃弾が襲いかかってきた。竜賀は咄嗟の出来事に身動きが取れなかった。しかしその直前自分の身体を強引に持ち上げてそばの林の中に強引に引き摺り込もうとする力があった。

光男「竜賀!!!逃げるぞ!!!」

 光男が竜賀に銃弾が放たれる直前、自分の息子の危機を察知し林の中に竜賀を身体ごと持ち上げ逃げ込んだ。2人とも林の中に倒れ込みマシンガンの銃撃音が止んだ瞬間に立ち上がり、先ほどの道を全力疾走で戻っていった。

 先ほどの墓地にまで来た時に2人は立ち止まり肩で息をした。はぁはぁと必死に肺に酸素を送り込み落ち着こうとするが竜賀は、人生で初めて自分に向けられた殺意に対して混乱していた。

 光男はあたりをキョロキョロ見渡し隠れる場所を探していた。

光男「竜賀!今の兵隊がまだ追ってくるかもしれない!今はとりあえずどこかに隠れよう!」

竜賀「う・・・うん」

 光男と竜賀は墓地の中で最も目立たなそうな墓標のところに行き、その裏側にへたり込んだ。2人は墓標の影で少し心を落ち着かせようとした。

光男「意味分かんねぇ・・・帰り道の脇道を通ったら行き止まりにキモい目ん玉の付いた黒い手が現れて・・・黒い渦の中に引き摺り込まれて・・・気がついたら見たことのない墓場のど真ん中にいて・・・墓場を抜けたらメチャクチャになったスラム街に出て・・・そこでマシンガン持った兵士に殺されそうになるなんて・・・なんて映画なんだよ・・・」

竜賀「・・・・・・」

光男「・・・どうした?竜賀?」

竜賀「ごめん父さん・・・」

光男「・・・何がだ?」

竜賀「オレ・・・あの帰り道通ってる時に・・・誰かが呼んでるような気がしたんだ・・・」

光男「誰かが呼んでる気がした?」

竜賀「うん、なんか誰か分かんないけどオレのことを呼んでるような気配がしたんだ・・・オレその時ほっとけば良かったのに・・・つい」

光男「好奇心でってことか?」

竜賀「・・・うん」

光男「好奇心ってのは大切だけど慎重に扱わねぇと周りを危険に晒す時がある。発見や探究ってのは人間を成長させてくれるがそんなに偉くなれるわけでもねえからな」

竜賀「あんなところ行かなきゃこんなことには」

光男「竜賀・・・いつも言ってるはずだろう・・・その時起きた出来事や失敗は変えることはできない・・・本当に大切なことはその後どうするかってことだ。失敗した過去は次に生かすことで捉え方を変える事ができる!失敗を失敗で終わらせないことが大切だってな」

竜賀「何で父さんそんなにいつも通りでいられるんだよ」

光男「お前がオレとの勝負に負けたり、辛そうな時になるといっつも決まってそんな顔をするから、いちいちクヨクヨしてんのがバカらしくなってくるだけさ」

竜賀「何だよそれ・・・」

光男「それに今よく考えてみれば、オレのそばにはお前がいてくれるから寂しくないしな・・・お前は最高の味方だよ」

竜賀「父さん・・・」

 光男は竜賀ににっこりと笑顔を見せた。竜賀は今この状況でもこんな笑った顔を見せる父親に妙な頼もしさを覚えた。光男はポケットからスマホを取り出し何か情報が掴めないか検索していた。

光男「くそ・・・スマホのWi-Fiも電波も全然つながってないんじゃ音楽しか聞けねぇじゃねえか・・・翻訳機能も使えないんじゃ事情を説明する事もできねぇし」

 すると向こう側から足音が聞こえてきた。光男が墓標の影から様子を伺うと先ほどの兵隊員がマシンガンを構えながら周囲を警戒しながら叫んでいた。

兵隊員「HeyおいThe two of you came outさっきの2人組出てこい‼︎There is an order to annihilate this areaこの一帯は殲滅命令が出ている‼︎」

光男「何言ってるか全然わからねぇよ・・・」

竜賀「全部英語で喋ってるからさっぱりだよ・・・」

光男「竜賀・・・こうなったら一旦降参作戦だ」

竜賀「はあ!?さっき散々格好つけといて早速降参かよ!」

光男「ばーか!さっきの兵士が話の分かるやつだったら無駄な体力使わず済むだろう!」

 光男は兵隊員の様子を伺いながらマシンガンの銃口が自分達の方向に向かうタイミングを見計らってーーー

光男「ストォォォーーーッッッップ!!!!」

 今まで見たことのないぐらいの大声で叫び、両手を上に向かってこれでも勝手って言うぐらい真っ直ぐ伸ばしていた。

光男「ジャストッモーメンッ!!!」

兵隊員「Don’t move動くな!!!」

光男「オーケー!!!オーケー!!!」

 光男は兵隊員が自分の両手に気がついたタイミングで背を向けた状態でゆっくり立ち上がって自分が無抵抗であることを必死に意思表示していた。竜賀は光男が背中から撃たれるかもしれない恐怖に駆られ必死に父親の服を引っ張り物陰に隠れようとさせた。

竜賀「お父さん!!危ないって!!」

光男「大丈夫だ!任しとけ!!」

兵隊員「Keep your hands up 手を挙げてand turn around slowlyゆっくりこっちを向け!!!」

光男「オーケー!!!」

 光男はゆっくり兵隊員の方に体の正面を向けていった。兵隊員は銃を構えたままだったが引き金を引こうとはせず、ジリジリと2人に近づいてきた。

光男「ウィーアー ジャパニーズ!!イングリッシュイズ マイディフィカルトラングエージ ソークドゥユースピーク スローリープリーズ!」

 するとその兵隊員は立ち止まってしばらく光男を見つめていた。そして片手で銃を向けたまま、もう片方の手でポケットの中からゴソゴソ何かを取り出そうとしていた。

 ポケットの中から黒い太いボールペンのようなものを出した。そのボールペンの側面にあるボタンのようなものをピッ押したかと思えば、それを口元に持っていき

兵隊員「Activate the translation function. 翻訳機能作動English to Japanese.英語から日本語へ

ナビゲーター「OK. Operation of translation function. Operation of translation function. English to Japanese. English to Japanese.  」

 兵隊員はボールペンの様なものを首の襟に引っ掛けるとマシンガンを再び両手で構えるとーーー

兵隊員「オレの言葉が解るか?言葉は通じているか?」

光男「おっ・・・はっはい!・・・あなたにも今僕の言葉が通じてるんですか?」

兵隊員「ああ・・・今マルチセルラーを翻訳モードにしているから日本が通じる状態だ。お前名前は?」

光男「オレの名前は藍川光男だ。アンタは?」

兵隊員「おれはクリフ・ポーランド。アメリカ合衆国ハドノア連合マードック部隊少尉だ。この近辺一帯の生存者の確認に来ていたんだ」

光男「オレはついさっき10分くらい前まで日本の千葉県にいたはずだったのが、気がついたらこの墓場のそこの真ん中あたりに息子と一緒に倒れていたんだ」

クリフ「10分前に日本に?・・・その話が本当ならばお前らは日本からこのアメリカにテレポーテーションしてきたことになるぞ」

光男「テレポーテーションって・・・」

クリフ「ミツオ。お前はさっき息子が一緒にいたって言っていたが、今もいるのか?」

光男「ああ・・・ほら竜賀立て、大丈夫だから」

 竜賀はゆっくり墓標の物陰から頭を出して、クリフが自分を見つめているのを確認して立ち上がった。

 そして竜賀が両手を上げた時、クリフはリュウガの右手のひらに浮かび上がっている青色の紋章を見るとーーー

クリフ「お前!!!デュナミストだったのか!!!」

 竜賀は突然大声で怒鳴り始めたクリフにびっくりしたじろいだ。突然聞いたこともない単語で自分を示された竜賀は再び混乱した。光男は慌てて竜賀のことを庇うようにクリフをなだめようとした。

光男「待ってくれクリフ!!落ち着いてくれ!!息子がどうしたって言うんだ!!」

クリフ「お前の息子の右手のひらに丸い紋章の様なものがあるだろう!!!これは呪われた力を持ったものの証だ!!!今すぐ殺さなければならない!!!」

 クリフの向けたマシンガンの銃口は竜賀の頭を狙い定めた。

ガンッ!!!

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