小説「アインシュタインに笑われる」第1話
あぁ、一刻も早く帰りたい。
オフィスで上司の叱責を受けながら、僕はそう思った。椅子のリクライニングをめいっぱい利用してのけぞり、机の上に足を乗せた姿勢で、40代前半の上司・山上が言う。
「お前の企画書にはさ、客が見えないわけ。誰がこの商品のためにカネを払うの?ん?説明してみ?」
家電メーカーに務める僕は、高齢化に伴い毎週のように高齢者向けの健康器具の新商品企画書を提出するよう義務づけられていた。
「ですから……60歳以上の健康に不安を抱えている男性なら……」
僕の言葉を遮って