見出し画像

CGの制作ってどう進めたらいいの?

どうも、ひでおです。
今回は実際にどのような流れでCGを使った映像を制作していくのかをお話していきます。ここでは具体的な手順ではなく、ざっくりとCGが映像になっていく過程をワークフロー(行程)に沿って解説していきます。

CG映像を制作する大まかな流れ

仕事になると通常はこれらを全部1人でやることは少ないです

複数人で作るのであれば、同時に進められる工程があったり、途中が入れ替わっても大丈夫な工程もあります。
例えば形状などが出来上がってしまえばアニメーションは先に作れるので、
テクスチャやマテリアル設定と同時にリギング・アニメーションの制作を進めるなど。
工程を後戻りするのが非常に大変なので、出来るだけ上流の工程で修正が無いようにするのが一番良いですが、後でこうしたいああしたいって事が出てくるのが世の常でございます…スケジュールに変更が無い場合、どんどん後の工程に携わる人たちが苦しむことになります…ので、工程毎で出来るだけ作業に抜けの無いように気を付ける事になります。
各工程の詳細について下で説明していきます。

1.企画(どんな内容にするか考える)

大げさに企画と書いていますが、「どんな内容にするのか?」を考える段階です。
ストーリーがあるのか、何か説明する映像なのか、特にストーリーなどは無く、物を綺麗に見せたいなど、初めて作るときはとりあえず何でもいいと思います。登場キャラクターを考えたり、どんな世界観にするのかなどを決めておくと後で破綻しないと思います。
※この段階でそもそもCGで作った方が良いのか、カメラで撮影した方が良いのかなど、本来はそういう部分も考える訳ですが、ここではあくまでもCGの解説なのでその辺りはいったん置いといてCGで作る前提で話を進めます。

2.コンテの作成(映像の見せ方を考える)

企画で考えた内容を元に、映像としてどのような順番で見せていくのかを考えます。簡単に言えば4コマ漫画とか、紙芝居のようなものです。
テレビドラマなどでエンディングを見ていると「演出家」という名前が出てきますが、どうやったら映像の内容が効果的に伝わるかなどを考える工程です。
例えばですが、「りんご」を例に出して演出を考えてみます。キーワードとして「美味しい」というのをテーマにイメージしてみると、りんごをそのまま見せるよりは、カットして並べたものをフォークで刺して食べるのを見た方が美味しいりんごなのかなと思うわけです。

カットされたリンゴを見ると食べたくなりますよね?

次は「美しい」をテーマにしてイメージしてみると、色や形をどのように見せるとりんごがきれいに見えるのかを考えた上で、りんごの赤色や、曲線などを上手に見せれば、見ている人は形が綺麗だなあと思ってくれるかもしれません。

赤色とみずみずしさ、美しい曲線

このように1つのものを見せる場合でも、視点を変えて考えると、どのような映像にすれば良いかのヒントが見つかるかもしれません、そもそもCMや何かのプロモーションなどは初めからテーマが決まっているような事も多いと思います。
ただし、趣味で作るとかSNSに投稿するとか、個人作品で作るとかというような場合、こだわりすぎても制作が進まないので、悩み過ぎないようにしましょう。


※今回は各工程の内容を分かりやすくするため、ここから下は、上の企画部分とは関係の無い簡潔なイメージで工程を説明していきます。
りんごの動画じゃなくてすみません…。


3.3Dモデルの作成

モデリングと呼ばれる、映像に必要な物の形を作ったり、キャラクターの形などを作っていく工程になります。

箱、球体、円錐のモデルを作成して並べた様子

4.マテリアル作成

作成したモデルの色や材質を決めていきます。
※この工程はレンダリング前に設定されていれば良いので、アニメーションの後でも特に問題ありません。

形状に色や質感を割り当てる様子

5.アニメーション・3Dエフェクト作成

作成したモデルに動きを着けたりするのがアニメーションの工程です。
専門のCGアニメーターという職業があるくらい動きを作るというのは専門性が高い作業になります。
また特殊効果などのエフェクト(VFXなどと呼ばれたりもします)についても、最近はCGで作ることが多く、特に危険の伴う炎や爆発、物が壊れる破壊、気象現象等は撮影することが難しいためCGであることが多いです。
Blenderにもエフェクトを作るための様々な機能が搭載されています。
以下はBlenderでガラスオブジェクトの破壊エフェクトを作ってみた例です。

円錐破壊エフェクトのアニメーションを設定した様子

6.レンダリング

レンダリングというのは、元々は完成イメージのスケッチなどを手書きで描いていた工程の事で、CGの場合はコンピューターが複雑な計算をして、3Dデータをモニターなどで見られる平面データに変換する作業です。画像や映像のデータとして保存して次の工程へ進みます。従来はもの凄く時間のかかる工程でしたが、昨今の技術の進歩により、ここ数年で目覚ましく高速化しています。ただ、複雑なシーンはそれなりに時間がかかりますので注意が必要です。

金属の質感、ガラスの質感などを設定しています(破壊前)
Cyclesレンダラーで破壊アニメーションをレンダリングした画像
Blenderからアニメーションを連番画像を書き出した例(10秒で300枚)
アニメーションの場合は「1枚の画像を処理する時間 × 枚数」分の時間がかかります。

mpeg4などの動画ファイルにしても良いのですが、レンダリングに失敗したときや修正作業が発生した場合、必要なところだけレンダリング出来るのが連番の最大のメリットです。ただし、複数ファイルの方がコピーや移動に時間がかかるため、ファイルの管理は大変になります…。
動画ファイルにした方が都合が良い場合もありますので、その辺りは臨機応変に作業します。


Blenderだけで完結する場合、ここで動画ファイルに書き出して完成です。


7.エフェクトなどの合成

ここから先はBlenderで書き出した動画に加工やエフェクトなどを足して、絵を作っていく工程になります。
Blenderでレンダリングした素材を、Adobe PremireAfterEffectsなどの編集・合成用ソフトウェアに読み込み、エフェクトを足したり、不要な部分をカットするなどの編集を行っていきます。

AfterEffectsでの編集・合成の様子
画像合成のイメージ

Adobeのソフトが無い場合はBlackMagicDesignDaVinci Resolve(無償版)をお勧めします。慣れるまでは少し難しいソフトですが、映画などの制作に使われるくらい高機能なソフトです。※無償版は機能制限があります。

8.編集・音入れ(BGM・効果音)

今回の場合は上の工程でほぼ編集も終わっていますが、複数のシーンがある場合はそれをまとめる作業が必要になります。また、編集したものに対して音を入れるなどの作業もここで行います。ただし、音に関してはアニメーションなどとも密接に関わるため、5や7の段階でアタリを付けておく必要があります。ここではAdobeのAuditionを使った音の入れ方を紹介します。

Adobe Auditionで動画を読み込んで音のタイミングを合わせます

編集と音の作成が終わったら、いよいよ最終ファイルの作成になります。
編集が完了した映像に、Auditionから書き出した音データを合わせて最終ファイルの書き出しを行います。

AfterEffectsで動画に音のファイルを合わせている様子

9.動画ファイルの作成・再生環境への展開

Adobeの場合はMediaEncorderという便利なエンコードソフトがありますのでそちらを使うのをお勧めします。Youtubeアカウントへログインして、動画の書き出し完了時に自動でアップロードすることもできます。

MediaEncorderで書き出し

一昔前は完成した映像はBlu-rayやDVDなど、様々なメディアに記録することが一般的でしたが、昨今は個人クリエイターであればYoutubeなどストリーミングメディアに直接アップロードするのが主流になりつつあります。
ディスクに記録する手間を省くことが出来る上、視聴制限などもかけることが可能になっているため、非常にやり取りの手間が減ったと思います。
動画SNSなどで沢山の人に拡散する事もできるため 、企業でも自社で動画を作成する部署を作るところも増えています。


完成した動画はこちら


まとめ

Adobeのツールに慣れているため、Adobeのツールを使ったものを紹介する形になってしまいましたが、Blender単体でも動画編集が可能ですし、上で紹介したDaVinci Resolveを使用すれば、エフェクト、動画編集、音入れまで無償版で行うことが出来ます。基本的な流れは同じですので、参考にしてみてください。Davinciについても別で解説を作ってみたいと思っています。


コラム的なお話

自分は世間の有名なクリエイターのような天才ではありませんので、一般的なお話しか出来ないのですが、企画や演出などについてはそれだけで職業になったり、書籍を読んで勉強をするような事でもありますので、ここではとても簡単に解説をしています。(演出などの深掘りをしてみたい方は岡田斗司夫さんのYoutubeをご覧になると、とても良い話が聴けます)
映像を作る際の基本的な考え方は上記で説明したような事が根本になっており、そこをいかに深掘りするか、色々な方向から見て最適なものを選んだりということになるかと思います。
ただ、凄く有名な映画などでも演出の意図が視聴者に全部伝わらないということは多々あります。それは視聴者の知見・経験不足の部分もあったり、または制作者が意図した演出が難しすぎたり、分かりにくいという部分もあります。最近はあまり無いですが、古い外国映画などでは特に多く見られ、アート寄りになるとどうしても増える傾向にあります。
ただ、何が良いかというのは非常に難しく、映画やアニメーションでは分かりやすくし過ぎると、説明的過ぎて面白さが失われるということにもなりかねないですし、逆にCMやマニュアル用の映像などでは意図が正しく伝わらないと問題が起きます。特にCMは限られた時間の中で最大限の効果を出さないといけないので、見ている人に何を訴えるのかというのを第一に作っている事が多いわけです。商品の名前を憶えてほしい場合は、連呼系と呼ばれるものがあるように、名前だけ繰り返すというのもありますがそれはそれで意図してやっているので良いわけです。
恐らく映像制作に関わる人の大多数は、出来れば映像で意図をしっかり伝えたいと思っており、連呼系などの演出はあまり好んではやりたくないのかなと思ったりするのですが、演出を考える方たちは日々そのあたりの部分に悩んでいるのだろうなあと思ったりする次第です。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?