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ビートルズから学ぶ研究者としての生き方

2023年11月2日、ビートルズの最後の新曲「Now And Then」が、ついに発表された。これを機会に、ビートルズから学ぶ研究者としての生き方を書いてみたいと思う。

ビートルズの歴史を辿ってみると、それは驚くほど研究者の生き方に参考になるものばかりであることに気づく。

初期のビートルズには、長く苦しい下積み生活があったことはよく知られている。特にそれが顕著なのが、レコードデビュー直前の、1960年〜1961年のドイツ・ハンブルグ時代であろう。母国イギリスから離れた海外での慣れない生活。当時のハンブルグはヨーロッパでも有名な歓楽街。地元クラブでの1日8時間以上の演奏。粗暴な客。粗末で窮屈な寝室。明るい未来は見えてこない。

こんな生活では、精神が病んでしまっても当たり前のとても過酷な状況である。しかし、彼らはメンバーで励まし合って、この辛い時期を乗り切り、ミュージシャンとしての実力をつけていった。そして母国イギリスに戻っている際、リバプールの小さなクラブ「Cavern Club」で演奏している姿を、後にマネージャーとなる、ブライアン・エプスタインに見出され、レコードデビューという道をたどることになる。

しかし、レコードデビューにあたっても、ビートルズは苦い挫折を経験している。1962年初頭に行ったDecca(大手レコード会社)でのオーディションでは、「ギターバンドはもう時代遅れだ」と一蹴されてしまう。しかし、あきらめずに、EMIでのオーディションに挑んだ結果、後にプロデューサーとなる、ジョージ・マーティンに見出され、ついにレコードデビューを果たす。その後の大活躍は、ここで私が述べるまでもないだろう。

さらにビートルズは、最新の録音技術を貪欲に取り入れていった。というよりも、ジョンとポールが頭の中で描く音楽を完成させるために、時には規則を破ってでも、新しい音色を追求していった結果といえるだろう(若きエンジニアのジェフ・エメリックの存在が大きい)。以下に、その功績を歴史順に挙げていく。

・ボーカルのダブルトラック(ADT:Artificial Double Track)の発明。

・フィードバックの発見(諸説あり)。代表曲「I Feel Fine」。

・逆回転再生の発見。代表曲「Rain」。

・シタール等のインド楽器の導入。代表曲「Norwegian Wood」。

・レズリー・スピーカーのボーカルへの導入。代表曲「Tomorrow Never Knows」。

・メロトロンの導入。代表曲「Strawberry Fields Forever」。

・テープ・サンプリングの導入(テープをカットして、バラバラにして再度貼り付ける作業)。代表曲「Being for the Benefit of Mr. Kite!」。

・ホワイトノイズの導入。代表曲「Revolution No.9」

・モーグ・シンセサイザーの導入。アルバム「Abbey Road」全般で使用。

このように、最新技術・機材を貪欲に取り入れていったビートルズ。録音機材もどんどん進化していった時代にいたため、まさに奇跡のタイミングとしかいいようがない。

研究者も、日夜開発が進んでいる最新技術・装置にアンテナを張り、時には型破りな使い方も、ブレイクスルーには大切なのかもしれない。そして、近年話題となっている「生成AI」を臆せず貪欲に活用していくことが、研究の成功に繋がるだろう。

EMI Studio

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